ああ諸君よ、諸君はこの颯爽たる、諸君の深南部から吹いて来る、透明な清潔な風を感じないのか – 不動岳
開始早々から、ふざけた急登だった。林道のわきからいきなり急斜面の直登が始まり、どれだけ登っても終わりがない。ときおり傾斜が緩やかになってホッとするも、すぐにまた急な登りとなってしまう。
矢筈尾根は厳しい登りだった。登るには ...
秋の終わりと冬の始まり – 西吾妻山
ふぅ、さすがに飽きてきた。
一切経山を下り、五色沼と家形山を越えて縦走路に入ると、展望はまったく無くなった。日の光は背の高い木々に遮られて薄暗い。雲の切れ間に太陽が現れても、縦走路の地面までは届かない。土は湿っぽく、ところ ...
冷たい瞳 – 一切経山
風が強い。油断してると体を持っていかれそうだ。赤茶けた砂と岩の山頂には、生命の気配がない。眼下の五色沼は、厚い灰色の雲に覆われた空を映している。
この五色沼、と言うよりも魔女の瞳という通称のほうが知られているだろうか、ここ ...
秋の終わりの秋晴れの山 – 日光白根山
ロープウェイの駅を出ると、ぽこぼこぽこと丸い三つのデコボコピークが正面に見えた。あれが奥白根山の山頂だ。
写真ではよく見る眺めだが、実際に目にするのは初めてである。何年か前に登ったのは北側の菅沼登山口からであり、こちらへは ...
歩くよりも3倍速い赤い彗星号、上高地へ行く
GWに一棟借りして宴会をした上高地のキャビンに、この秋、再び集合することになった。
他のメンバーは金曜から有給を取り、観光したりどこか登ったりしてから行くというたいへんけしからん境遇だが、わたくしは土曜の朝に出発である。金 ...
タイム塔ライアル & 蛭ヶ岳ピストン
先週は山に行けなくて、来週も行けない。今週は登っておきたい。でないと、三週間も空いてしまう。新しく買った靴の試し履きもしたい。
そんな週末に限って、天気予報は雨。さて、どこへ行こう。
こんな時はだいたい奥多摩か ...
キラキラと輝いていた、あの夏の山々 – 爺ヶ岳 / 鹿島槍ヶ岳 / 五竜岳 / 唐松岳
空にはひとつの雲もなく、山は緑に彩られ、進むべき道は目の前に広がっている。
美しい、素晴らしい、他に言葉も思い浮かばない。
扇沢から三時間登り、種池で主稜線に出た。ここからはずっと森林限界を超えた稜線を歩く。今 ...
一泊二日の奥多摩地味デート – 酉谷山 / ウトウの頭
6月の終わりだったか7月の初めだったか、八ヶ岳の稜線を歩いていたら、いきなり本名の下の名前の上ふた文字に「ちゃん」付けで呼びかけられた。「けんちゃん」とか「たけちゃん」とか「としちゃん」とか、そんな感じのやつだ。
うん?な ...
奥多摩ピークハンティング – 金比羅山 / 白岩山 / 麻生山 / 日の出山
土曜日が仕事になってしまい、日曜は映画を観に行く予定がある。今週は山には行けないなと思っていたが、日曜の朝に目覚めると思いのほかの好天だった。
よし、行くか。映画は夕方からだから、それまでにもどってくればいい。登って下って ...
灼熱アルプス Day5 – 薬師岳〜折立
黒い闇は淡い藍へと移ろい、たなびく雲が紅色に染まる。新しい朝が生まれた。稜線で迎える朝だ。
稜線で朝を迎えたのは、この五日間で初めてである。森林限界を超えた稜線の夜明けは、いつでも美しい。まだ真っ暗な時間から沢を登ってきた ...