灼熱アルプス Day4 – 黒部五郎岳 / 北ノ俣岳
夜が明けた。
朝陽がカール上部をオレンジ色に輝かせ、やがて全体をやわらかな光で包んでいく。岩壁に囲まれた緑のカール、やさしい朝の光、点在する巨石、すべてが美しい。
夜明け前の登山道を黙々と登っていたら、思いのほ ...
灼熱アルプス Day3 – 鷲羽岳 / 三俣蓮華岳
目覚めは悪かった。
背中が痛くてよく眠れていない。疲れはまったく取れてない。
テントの外はすでに明るい。周囲の登山者はとっくに出発しているだろう。まあいい、今日は縦走中で最も行程が短い日だ。
朝から ...
灼熱アルプス Day2 – 祖父岳 / 水晶岳 / 赤牛岳
テントの下の地面にはいくつもの大きな石が埋まっていて、頭を地上に出している。マットを敷いてもゴツゴツと背中に当たり、まっすぐ寝ることができない。石を避けてS字型になって、寝返りも打てずにひと晩を過ごした。縦走2日目も寝不足で始まった。 ...
灼熱アルプス Day1 – 折立〜雲ノ平
山の日を含む三連休に続けて休みがたった一日、さらにそこへ無理やり有給をくっつけた五日間、それが夏休みのすべてだ。
この貴重な五日間の予想天気図では三つの台風が日本列島を取り囲んでいて、台風の進路予想にやきもきする日々だった ...
夏空に夏の山 – 物見山 / 八風山
夜半に降り出した激しい雨は早朝にはやんでいたが、空はどんよりと曇り、空気はたっぷり湿気を含んでいる。峠まで車で上がると周囲は霞んでいて、まるで雲の中にいるようだった。気温はこれからどんどん上昇して、登山にはまったく不向きで不快な天候に ...
水と緑の惑星 – 川苔山 / エビ小屋山 / 赤杭山
とろっとした空気が全身にまとわりつき、まるで泳ぐようにして進む。あらゆる毛穴から絶え間なく汗が吹き出し、皮膚を伝って流れる。首に巻いたタオルを絞ると、雑巾を絞ったかのように汗が流れ落ちた。
尋常でない湿気だ。雨模様の大気は ...
奥美濃の城下町 – 郡上八幡
美濃というと、かなりの山深い地を思い浮かべる。奥美濃というのはさらにその奥なのだから、そこにはもう山しかなく、熊や猪の住む世界だろうと想像していた。しかしそこにも町はあり、人々が暮らしている。
海の無い岐阜県のほぼ中央とい ...
肉とローメン
長野県伊那市には、ローメンという食べ物がある。知ってる人は知ってるが、大多数の人はまったく知らない、そんな食べ物だ。高速道路のSAで販売したりB1グランプリに出場したりと地道な普及活動は行われているが、いまのところ伊那市の外へと広まる ...
地味山登山のススメ – 経ヶ岳
頭上には木々が生い茂り、足元は笹に覆われている。どこまで登っても同じ光景だ。経ヶ岳は木曽山脈の端に位置する独立峰のような山なので、里から登るとただひたすらに登りが続く。地味な急登だ。距離も長い。
いや、地味な山だってもちろ ...
ウルップソウに会いに行こう
やっと会えた。ずっと会いたかった花に。最盛期にはやや遅く、終わりかけではあったけど、なんとか待っていてくれた。
分厚くて艶のある硬質の葉が砂礫の地面に低く生え、その中心からまっすぐ伸びた花茎に青紫色の細長い花が無数に咲く。 ...