一泊二日の奥多摩地味デート – 酉谷山 / ウトウの頭
6月の終わりだったか7月の初めだったか、八ヶ岳の稜線を歩いていたら、いきなり本名の下の名前の上ふた文字に「ちゃん」付けで呼びかけられた。「けんちゃん」とか「たけちゃん」とか「としちゃん」とか、そんな感じのやつだ。
うん?な ...
奥多摩ピークハンティング – 金比羅山 / 白岩山 / 麻生山 / 日の出山
土曜日が仕事になってしまい、日曜は映画を観に行く予定がある。今週は山には行けないなと思っていたが、日曜の朝に目覚めると思いのほかの好天だった。
よし、行くか。映画は夕方からだから、それまでにもどってくればいい。登って下って ...
灼熱アルプス Day5 – 薬師岳〜折立
黒い闇は淡い藍へと移ろい、たなびく雲が紅色に染まる。新しい朝が生まれた。稜線で迎える朝だ。
稜線で朝を迎えたのは、この五日間で初めてである。森林限界を超えた稜線の夜明けは、いつでも美しい。まだ真っ暗な時間から沢を登ってきた ...
灼熱アルプス Day4 – 黒部五郎岳 / 北ノ俣岳
夜が明けた。
朝陽がカール上部をオレンジ色に輝かせ、やがて全体をやわらかな光で包んでいく。岩壁に囲まれた緑のカール、やさしい朝の光、点在する巨石、すべてが美しい。
夜明け前の登山道を黙々と登っていたら、思いのほ ...
灼熱アルプス Day3 – 鷲羽岳 / 三俣蓮華岳
目覚めは悪かった。
背中が痛くてよく眠れていない。疲れはまったく取れてない。
テントの外はすでに明るい。周囲の登山者はとっくに出発しているだろう。まあいい、今日は縦走中で最も行程が短い日だ。
朝から ...
灼熱アルプス Day2 – 祖父岳 / 水晶岳 / 赤牛岳
テントの下の地面にはいくつもの大きな石が埋まっていて、頭を地上に出している。マットを敷いてもゴツゴツと背中に当たり、まっすぐ寝ることができない。石を避けてS字型になって、寝返りも打てずにひと晩を過ごした。縦走2日目も寝不足で始まった。 ...
灼熱アルプス Day1 – 折立〜雲ノ平
山の日を含む三連休に続けて休みがたった一日、さらにそこへ無理やり有給をくっつけた五日間、それが夏休みのすべてだ。
この貴重な五日間の予想天気図では三つの台風が日本列島を取り囲んでいて、台風の進路予想にやきもきする日々だった ...
夏空に夏の山 – 物見山 / 八風山
夜半に降り出した激しい雨は早朝にはやんでいたが、空はどんよりと曇り、空気はたっぷり湿気を含んでいる。峠まで車で上がると周囲は霞んでいて、まるで雲の中にいるようだった。気温はこれからどんどん上昇して、登山にはまったく不向きで不快な天候に ...
水と緑の惑星 – 川苔山 / エビ小屋山 / 赤杭山
とろっとした空気が全身にまとわりつき、まるで泳ぐようにして進む。あらゆる毛穴から絶え間なく汗が吹き出し、皮膚を伝って流れる。首に巻いたタオルを絞ると、雑巾を絞ったかのように汗が流れ落ちた。
尋常でない湿気だ。雨模様の大気は ...
奥美濃の城下町 – 郡上八幡
美濃というと、かなりの山深い地を思い浮かべる。奥美濃というのはさらにその奥なのだから、そこにはもう山しかなく、熊や猪の住む世界だろうと想像していた。しかしそこにも町はあり、人々が暮らしている。
海の無い岐阜県のほぼ中央とい ...