登らずして敗退した日
あーあ、雨降ってきちゃったよ…。
コンビニの駐車場に車を入れて空模様を眺める。さて、どうしようか。
朝起きて車を走らせ、秩父へ向かった。秩父ならうちからさほど遠くない。軽く登ってお昼ごはんを食べたら帰ってくるつもりだった。
それが、山に近づくにつれて空は暗くなり、あと少しで秩父市街というところで、ついに雨が落ちてきてしまった。
うーん、どうしよう。登って登れないほどの降りではないが、あまり気が進まないのも確かだ。温泉でも入って帰るかとも思ったが、温泉が開くまでまだ2時間もある。

コンビニの駐車場でしばらくグズグズしていたが、ここまで来て引き返すのも馬鹿らしいので、とりあえず登山口へ向かった。
登山口に近づくにつれて雨は強くなっていった。どうしようか。登りたい気もするけど、濡れるのも嫌だ。
登山口の駐車場に到着し、しばらく逡巡していたが、諦めて帰ることにした。
この夏は雨に打たれて2台のカメラを壊している。新しく買ったカメラまで壊したくはない。
いや、それは理由ではなく、自分に対する言い訳だな。防水袋を持ってきてるのだから、カメラはそれに入れとけばいい。やはり、どうしても気乗りがしなかったというのが正直なところだ。

登頂を諦めて引き返した登山者に対して、賢明な判断ですねと言葉を掛ける人がいる。なに言ってるんだよと思う。それにずいぶんと上から目線じゃないかとも思う。
登頂を諦めたときは悔しくて悔しくてずっと引きずるし、引き返したのが賢明だったかどうかは永遠にわからない。撤退が賢明だったと知ることができるのは、撤退せずに突っ込んで決定的に間違った時だけである。
今回は自分の意思で登らなかった。自分の心に負けたとも言える。
なさけないがウジウジしても良いことはない。気を取り直してなにか美味しいものでも食べに行こう。
秩父市内までもどり、以前から入ってみたかった食堂へ行くと、改装中で臨時休業であった
冴えない日は最後まで冴えない。
2021年9月