空いっぱいの愛を – 南沢山 / 横川山 / 富士見台高原

二時間の登りで南沢山に着いた。

空は青空。空気は澄んで、遠くの山までよく見えている。

薄く積もった雪を踏みしめて進む。

空が広い。緩やかな起伏の連なる稜線を気持ちよく歩いていく。

南沢山より50mほど標高の上がった横川山からは、周囲の山々がよりよく見えた。

威風堂々とした御嶽山、その奥には乗鞍岳に北アルプス。こちら側から眺める中央アルプスは新鮮だ。東を見れば、南アルプスが一直線に並んでいる。

一面の銀世界を期待したが、予想通り雪は少なかった。しかし、緑の山にわずかに残る白い雪の風景は、これはこれで美しい。

富士見台高原には残雪があり、冬山らしい山頂だった。白い雪が広い山頂を覆っている。

到着した時にはまだ展望があったが、すぐにガスで隠れてしまった。急ぐわけではないので、山頂で天候の回復を待つ。

持ってきた本を読んでいると、気づけばなんだか明るくなっていた。

ふと顔を上げると空は青く、雪を戴いた白い峰々が輝いている。

北アルプス、中央アルプス、南アルプス。

この先は、恵那山へと続く道。

大気中の微細な粒子はすっかり洗い流されて、空気が透明だ。

やがて陽が傾き、淡い空の色。アルプスの峰が朱色に染まる。

恵那山の向こうに太陽が沈んでいく。

だれもいない、静かな夕暮れ。

冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んだ。

なんて美しいんだろう。

陽が沈み、冷え込んできたが、この場を立ち去り難く、いつまでもいつまでも眺めていた。