緑の山の滴る季節 – 子持山
緑が深い。初夏の山だ。季節は確実にひとつ進んでいる。
岩に登ると視界が開けた。うねるように連なる緑の山々に、特徴的な岩がぽつりぽつりと浮かんでいる。
だれもいない。静かだ。山と岩と自分だけ。
いくつかの小ピークを超えて進むと、緑の海から大きく突き出た岩峰が現れた。あれが獅子岩だろう。
遠目には登れるのか疑わしいほど尖って見えた岩山にも、上へと向かう踏み跡が付いていた。
最後は鎖で岩壁を登り、てっぺんへと至る。
空が大きい。足元がすーすーする。
空と山のあいだに立っているのだ
さらに先へ、柳木ヶ峰から子持山へと歩いていく。
すっかり終わっていたヤマツツジの花が、子持山の山頂にだけ咲いていた。春の名残はもうこれだけだ。
山はすっかり夏の準備に入っている。
熱い季節がやってくる。
2019年6月