緑の山の滴る季節 – 子持山

緑が深い。初夏の山だ。季節は確実にひとつ進んでいる。

岩に登ると視界が開けた。うねるように連なる緑の山々に、特徴的な岩がぽつりぽつりと浮かんでいる。

だれもいない。静かだ。山と岩と自分だけ。

いくつかの小ピークを超えて進むと、緑の海から大きく突き出た岩峰が現れた。あれが獅子岩だろう。

遠目には登れるのか疑わしいほど尖って見えた岩山にも、上へと向かう踏み跡が付いていた。

最後は鎖で岩壁を登り、てっぺんへと至る。

空が大きい。足元がすーすーする。

空と山のあいだに立っているのだ

さらに先へ、柳木ヶ峰から子持山へと歩いていく。

すっかり終わっていたヤマツツジの花が、子持山の山頂にだけ咲いていた。春の名残はもうこれだけだ。

山はすっかり夏の準備に入っている。

熱い季節がやってくる。