山蛭戦記 2016 – 高ドッキョウ / 貫ヶ岳
足首にチクっと刺す軽い刺激。
針の先で軽く触れたかのような、気づくか気づかないか程度の微かな痛みだ。しかし、この感覚には覚えがある。過敏にもなっている。
まさか…。きたか…。
登山靴に指を突っ込み確 ...
北アルプスの四日間 その5
涸沢の夜は賑やかだ。
カラフルなテントの群れに灯りがともり、艶やかに煌めいている。そこかしこでいつまでも、楽しげなざわめきが聞こえている。無数の話し声が集まって、ざわざわという音の塊になり、カールを優しく包んでいる。
北アルプスの四日間 その4
喧騒の奥穂高岳山頂を離れて、西穂への縦走路をほんの少しだけ歩いた。さすがにちょっとあのカオスな山頂には居続けられなかったので、静かなところでゆっくりと、この三日間を振り返ろうと思ったのだ。
わずか数十メートル山頂を離れただ ...
北アルプスの四日間 その3
涸沢岳はガスに巻かれていた。展望はないが、暑くないのは助かる。景色は明日の楽しみとしよう。
ひさしぶりに腰を下ろして休憩した。北穂高小屋でも南岳小屋でも立ったままだったから、座ったのは朝ごはんを食べた大喰岳以来だ。ここまで ...
北アルプスの四日間 その2
day 2
槍の穂先の向こうから、新しい太陽が登ってきた。
朝が来た。世界が光で満ち溢れていく。
昨日は喘ぎながら登った槍の肩までの登りを、今日はほんの僅かではあるが楽に登ることができた。ひと晩寝て疲れ ...
北アルプスの四日間
夏休みは北アルプスへ。春からずっとそう考えていた。
これまではほとんど日帰りでしか山へ行けなかったので、なかなか北アルプスに登ることができなかった。それが、まあ、望んだわけではないが、休日はわりと自由に好きなだけ山へ行って ...
瑞牆山で観光登山
土曜が仕事になって週末の休みが一日しかないし、来週は北アルプス縦走を控えているしで、今週の山は軽く瑞牆山にしておき、下山後は適当に周辺を観光するって計画をご提案いたしました。
「えー、瑞牆山ってけっこう険しい山でしょ? 登 ...
想いの詰まった南アルプスの稜線 – 白峰南嶺
午前3時。
夜が明けるまで、まだ2時間近くあるが、もぞもぞと起き出してテントから顔を出し、西の空に目をやる。
黒々とした山脈と、その上に広がる少しだけ色の薄くなった黒い空。その境目に、稜線はくっきりと山の形を縁 ...
愛と悲しみの甲斐駒ヶ岳
「えー、わたしに登れるかな〜?」
先週の会津駒で積年の恨みを晴らしたM子先生の、新M子先生としての最初の山は甲斐駒ヶ岳と決まりました。駒ヶ岳つながり…というわけではなく、天気予報の都合でです。
「甲斐駒なんて登 ...
リベンジ中門岳
リベンジ…松坂大輔のおかげで、雪辱を果たすとか借りを返すとか再挑戦とかの前向きな意味で日本語に定着していますが、英語本来の意味は復讐報復仕返し怨みを晴らすといったドロドロ怨念を感じさせる言葉であります。
そういうわけで、リ ...