博多ラーメンの源流を訪ねて – とんこつラーメン放浪記 3
現在の博多ラーメンは、長浜ラーメンや久留米ラーメンなどの影響を受けつつ発展してきたものだという。では元々の博多ラーメンとはどんなものだったのだろう。昔ながらの博多ラーメンを今でも変わらず提供し続けてる店が福岡市内に何軒か存在していると知り、そのうちの一軒『博龍軒』を訪ねた。
市内中心部からは少し離れた、団地に隣接する古びれたショッピング街に博龍軒はあった。のれんの破れ具合が店の歴史を物語っている。さすがはとんこつラーメンの源流店、ただならぬレジェンド感だ。古臭いラーメンは流行らないのか、カウンターのみの客席は半分以上が空いていた。食べに来ているのはどう見ても近所の常連客ばかりだ。
壁のメニューに目をやる。とんこつラーメン店にしては珍しくワンタンメンがある。もやしラーメンやメンマラーメンなんてのもある。どれも気になるけど、今回のとんこつラーメン探求はデフォルトで通すことに決めているのでグッとがまんする。
それよりも(大)だ。大だよ大、つまりは大盛りだ。替玉もいちおうあるが、これは後から追加された可能性が高い。源流とんこつラーメンとしては並と大だったのではないだろうか。これは替玉システムが長浜からの移植であるという説を裏付ける。
ラーメン(大)を注文した。茹で方は訪ねられなかった。都内だと何も言わないと茹で方の指定を催促されるけど、九州では何も言わなければ「普通」で出てくる。茶色いスープをひとくち飲んでみたら、微かなとんこつ臭とともに醤油の味もした。とんこつ醤油ラーメンだ。ほのかに甘みがあるのは九州醤油の甘みだろうか。
麺が特徴的だった。よくある極細麺ではなく、中細の平麺だ。細麺の平麺というのは珍しくて、過去に出会った記憶がない。とんこつラーメンといえば極細ストレート丸麺だというのが常識になっているが、源流とんこつは平麺なのだ。やはり極細ストレート丸麺は長浜から各地に伝播したものなのだろうか。
麺はだいぶやわらかめに茹でられていた。考えてみれば九州のうどんはかなりやわらかく茹でられていて、あれが元々の九州人の好みなのだとしたら、バリカタ信仰はとんこつラーメンの歴史のどこかで新たに発生した可能性がある。
卓上トッピングには高菜も紅生姜もなく白ゴマのみ、ゴマはすりゴマになっていた。よくある炒りゴマは、あれを入れても正直あまり意味ないのでは?と思っていたが、すりゴマになっていると影響は大きい。これが源流スタイルなのかこの店の独自性なのかはわからない。
豚の骨を煮込んだスープのラーメンなのだからとんこつラーメンには違いないのだけど、一般的にイメージするとんこつラーメンとはやはりちょっと違う。源流とんこつラーメンを確認したら最先端トレンド大人気とんこつラーメンも食べて比較しようと考えていたのに、大人気店は昼ごはんが夕ごはんになるほどのありえない行列ができていて、さすがに並ぶのは諦めた。
残念ながら今回は博多の最先端トレンドを食べる機会はなかったが、次に訪れたときには時間に余裕を持って並ぼうと思う。
2024年12月