尾瀬の奥地へ 前編 – 鬼怒沼山
思わず手をついて攀じ登るほどの急な山道を3時間登ると、突然視界が開けた。鬼怒沼湿原に着いたのだ。
青空の下に広がる緑の湿原。遠くには奥白根山の頂が見える。
この先の行程も長いので立ち寄る予定ではなかったのだが、この景色を見てしまったら通り過ぎることはできない。縦走路から外れて湿原の木道へ足を踏み入れた。
池塘は空の青さを映して深い。山の上にこんな広々と開けた場所があるなんて不思議だ。人も少なく、良いところである。
湿原の端まで歩き、縦走路へもどった。
鬼怒沼山の山頂にも寄り道した。先を急ぐとはいえ、登れる山頂には登っておく。
鬼怒沼山との分岐を過ぎると、道は荒れ始めた。歩く人も少ないのだろう。
それにしても暑い。
3リットルの水を担いできたが、すでに2リットル消費してしまった。この先に水場があるが、水が出てるかどうかは行ってみないとわからない。もしもに備えて残りの1リットルはとっておきたい。水が補給できなければ、その1リットルで引き返すことになるからだ。
暑さで頭がくらくらしてくる。軽く熱中症だ。体が重く、進む速度は遅い。倒木が多くて歩くのに難儀する。比較的平坦なだけが唯一の救いである。
まだかまだかと思い、何度も地図を確認し、ようやく小松湿原手前の水場に到着した。登山道の脇でじゃぶじゃぶ流れ出す水を見たときは、心底ホッとした。
つづく