京中華

京都には独自に発展した中華料理がある。

京中華や京都中華と呼ばれるこの種の料理は、ニンニクなどの刺激の強い食材は使用せず、昆布と鶏ガラのあっさりした出汁がベースとなり、薄味で油は極度に控えめな、いかにも京都人が好きそうなぼんやりした味わいの中華料理である。

京都に中華料理が伝播した初期の頃から、京都人の好みに合わせて進化してきた料理だ。京中華の店がどこも広東料理店を標榜しているのは、日本に伝わった最初の中華料理が広東料理だった名残りであろう。

現代では四川料理や上海料理など中国各地の料理店に、ヌーベルシノワや現地系の食堂などが混在するが、その中でも京中華のお店は変わらず存在感を放っている。

京中華の代表料理として真っ先に挙げられるのは「からしそば」であろう。茹でた中華麺にカラシをからめて、あっさり味のあんをかけた料理だ。店によってはカラシがたっぷりからめてあり、ツンと鼻をつく刺激は、ある意味、京中華らしからぬ料理でもある。

京中華で私が最も好きなのは焼売だ。関東のものに比べると大ぶりな焼売にはクワイが混ぜ込んであり、シャクシャクとした歯触りが心地良い。

炒め物にはしばしば「煮付け」という語が用いられている。極限まで少量の油で仕上げられており、確かにこれを炒め物と言って良いのが迷う仕上がりである。

揚げ物もあるにはあるが、酢豚や辛子鳥など、カラッと揚げられてしっかり油切りされたうえに、あんかけになっていて非常にあっさりとした味わいだ。これは揚げ出し豆腐のように、揚げ物を出汁に浸して柔らかくした和食とも共通する風味がある。

全体的に見ると、関西和食の技法と食材で中華料理(広東料理)を再構築した料理体系と言えるであろうか。

今回は昼夜と四店舗で食事をし、他にもえび天ぷらや春巻き、唐揚げ、ポテトなど独特の料理をいただいたが、まだまだ行ってみたいお店はあるし、食べてみたい料理は尽きない。

いつか再び京都を訪れて、中華料理店巡りをしたいものである。