グリーン大佐、答えてください – 夕日岳 / 古峯神社

ひとりで山を歩いていると、なにかのメロディが頭の中でくり返し流れて止まないことがある。それは記憶の沼から浮上した旋律であったり、巷で流行りの音楽だったりと脈絡がない。

しとしと雨降る樹林帯を歩いていると必ず脳内に流れる歌がある。

わたしたちは幸せになれるでしょうか
わたしたちの祈りはとどいたでしょうか
グリーン大佐、答えてください

寂しげで悲しげな歌がよく似合う空模様だ。予報では晴れだったのに、天気は快復しそうにもない。

夕日岳の山頂を取り囲むアカヤシオの群落は固い蕾の付き始めで、まだまだ咲き出す気配もない。目の前に見えるはずの日光連山も厚い灰色の雲に隠されている。

寂しげで悲しげな山頂だ。花咲き誇る快晴の日に訪れていたら、また違った印象になっていただろう。

しばらく粘っていたが、祈りは届かず雲も取れなさそうである。体も冷えてきたので下山することにした。

なんだか消化不良だったので、地蔵岳から沢を下らず尾根道を遠回りした。いくつかのピークを通過して、古峰ヶ原高原の入口へ降りた。

ここから高原を超えて古峯神社まで戻ることもできるが、さすがにこの天気でそこまでの気力はなく、舗装路を歩いて帰った。

古峯神社は閑散としていた。大駐車場には数台の車しかなく、境内の天狗のオブジェは雨に濡れていた。

天狗のイラスト入りの御朱印が昨今の御朱印ブームで人気沸騰し、醜い諍いも起こったというが、いまや御朱印受領場は無人である。受付は社務所へとの張り紙が物憂げだ。

沈鬱なこの日々には、いつ終わりが来るのだろうか。

グリーン大佐、答えてください。

2021年4月