こむらさき – とんこつラーメン放浪記10
昨年の九州旅行で初めて食べて熱烈ファンになったこむらさきのラーメン、この一年の間、またあれ食べたいなあとしばしば思いを馳せていたのだが、思い余って一年ぶりに食べに来た。二年連続こむらさきなんて、なんと恵まれているのだろう。
一応念のため書いておくが、ここで言う「こむらさき」とは、鹿児島こむらさきのことである。熊本にも同名のラーメン店があるが、そちらはニンニク油がぶんぶん効いた熊本ラーメンの店だ。それではない。横浜のラーメン博物館に入っているこむらさきも熊本のこむらさきである。それでもない。
一年ぶりの鹿児島こむらさきのラーメンは、記憶の通りの味わい深さだった。コクや甘味の足りないスープも、やわらかく茹でられた麺も、一度に20杯以上も同時に作る大雑把な調理法も、なにからなにまで現代日本のラーメン文法を逸脱した、中華圏や東南アジアの麺料理に通じるラーメンだ。

カウンターで隣になった中年男性は、入店前に店の写真を何枚も撮っていたし、先払いの注文方法にとまどってもいたので、初めての来店に違いない。スープをひとくち啜って首を傾げ、麺をひとくち啜って手が止まると、やにわに卓上のニンニクを親の仇のように大量投入し、コショウをこれでもかこれでもかと振り始めた。あぁ、なんてことを…。
まあでも、このおじさんの気持ちもわからないではない。こむらさきのラーメンは、インパクト重視を極限まで極めて極北に至った現代日本のラーメンとはまったく異なるベクトルの麺料理なのだ。いわゆる一般的な美味しいラーメンを期待して食べると、首を傾げるものになってしまうのかもしれない。
ここはひとつマインドチェンジして、現代日本ラーメンではなくアジアのどこかの国の麺料理だと思って食べてほしい。
2025年12月





