アリランラーメン

幹線道路を外れて集落へと続く山道に入った。山道といっても道幅は広く、登りもカーブもゆるやかだ。

ここは房総半島の真ん中あたり、長野や山梨とは違って山間部らしさはあまりない。どちらかと言うと丘陵地帯だ。

こんなところへ何しに来たのかというとラーメンを食べに来たのだ。あるんだよ、こんなところにラーメン屋が。

集落を抜ける手前で、駐車場の入口を示す小さな表示が目に入った。あわててハンドルを切る。

開店時間よりだいぶ早く到着したので、しばらく周辺を散策することにした。

のどかだ。それにしてものどかだ。いわゆる「なにも無い」と言われてしまうような土地だ。

集落内では誰にも会わなかったが、ラーメン屋の開店時にはけっこうな数の人が店の前にいた。幹線道路から外れているので偶然通りがかったりはしない。みんなわざわざここに来た人たちばかりだ。ここでいただくのはアリランラーメンである。ニンニクの効いたピリ辛スープのラーメンだ。

ニンニクは効き過ぎるくらい効いていて、店内にはニンニク臭が充満している。だが、口に入れるとニンニクよりも玉ねぎの甘さが際立って感じられた。とろとろチャーシューの下には、入れ過ぎじゃないか?と訝しむほどの玉ねぎが入っている。玉ねぎの甘みとニンニクの旨味をピリ辛でまとめたラーメン、美味しくないはずがない。

心配したニンニク臭は、煮込んでいるうちに空気中に放出されてしまうのか、食後に気になることはなかった。

アリランラーメンを提供する店は千葉県内にもう一軒ある。こちらは街道沿いにあり、通し営業で夜までやっているので訪れやすい。

やはり同様に、玉ねぎの甘みとニラとニンニクの風味が効いた独特のラーメンを食べさせる。ジャンクだといえばジャンクなのかもしれないが、なかなかクセになる味ではある。

この街道沿いのお店がアリランラーメン発祥の店で、その他は親族の経営だという。かつては何店舗かあったが、いまではこれら二軒のみになってしまった。アリランラーメンは登録商標になっているため、親族以外に広まることはなかったようだ。

これからも廃れることなく、かと言って拡大することもなく、房総半島中央部の山中で細々と食べ続けられていくのだろう。

2024年2月