牛肉と豪商の町 – 松阪

松阪といえば松阪牛だ。

日本全国数多くのブランド牛の中でも、松阪牛は押しも押されぬトップブランドである。

松阪牛は観光の目玉で、街を挙げて牛肉を推している。松阪牛の販売店や松阪牛を食べさせる店は数多い。

創業が明治に遡る立派な料理屋も複数ある。

江戸時代の松坂は商業の栄えた町人の街だった。松阪の商人は江戸や大阪でも活躍して財を成した。

三井財閥の三井家も松阪出身だ。市内には小津家や長谷川家といった豪商の館が今も残る。

江戸時代の国学者、本居宣長も松阪の出身だ。三井家発祥の地や豪商の館が集まる本町の一画に本居宣長は居を構えていた。

建物自体は博物館へ移設されているが、旧宅跡は今もそのまま保存されている。

松阪にゆかりのある人物のひとりに映画監督の小津安二郎がいる。小津は青春時代を松阪で過ごした。松阪時代の経験が、後の映画制作に影響を与えたという。

市内には小津安二郎記念館があり、小津映画ファンとしてはぜひ訪れたかったが閉館時間に間に合わなかった。またの機会に持ち越しだ。

豪商の屋敷がある本町から大手通りを西へ進むと松坂城に至る。

城の南側はかつての武家町で、御城番の居住した19戸の長屋が当時の姿のまま残っている。

整然とした美しい町並みだ。この一画だけ時代が違う。

御城番屋敷の一部には、子孫の方がいまでも居住しているそうだ。

19戸のうちの1戸を松阪市が借り受けて内部を無料公開しているのだが、やはり残念ながら閉館時間に間に合わなかった。

再びこの地を訪れなければならない理由が増えていく。

2025年9月