ゆるキャン△ in 劔沢&雷鳥沢 – その3
夜明け前から歩き始めたが、いまひとつ気分が盛り上がらない。
そろそろ東の空が明るくなってくる時間なのに、雲に覆われた空は暗い。
カールを登って一ノ越に着いた。天気が良ければ浄土山のほうも回ってみるつもりだったが、ガスが出ているのでそのまま雄山へ登ることにした。
登るにつれてガスが取れてきた。急激に足取りが軽くなっていく。青空が広がり、北アルプスの山々が見渡せる。
いいぞいいぞ、もっと晴れろ。
雄山に着く頃には、すっかり晴天になっていた。
ゆっくり時間を過ごして山頂を満喫したら、縦走路へと進もう。
大汝山、富士ノ折立と稜線を歩く。進む先には剱岳、振り返れば過ぎてきた峰々、青空の下でここを歩ける幸福感。
肝心なところでは、ちゃんと晴れてくれる。持ってるな。
富士ノ折立を超えると、岩がちだった稜線は荒涼とした砂礫の道へと様子を変える。
急な斜面を鞍部へと下り、緩やかに真砂岳を過ぎて、別山へと登っていく。青い空に映える大きな山だ。
別山からは二日前に歩いた道だ。
別山乗越へと向かっていくうちにガスが上がってきて、たちまち風景を隠してしまった。まあしかたないか。それにしても雄山から別山までのメインパートを青空の下で歩けたのだから最高だ。
乗越から劔御前へ向かった。劔御前から剱岳が見えないのは冴えないが、いちおうピークまでは行っておこう。周囲の風景は見えないが、頭の上には青空が広がっている。自分の立っているところだけが晴れているのだ。
メインルートの賑わいから離れ、ひと気のない稜線を歩いていく。
そろそろ劔御前に着くころだなと思い前方に目をやると、山頂の向こうの空間に、ガスの中から剱岳が現れていた。
走った。
ガスの切れ間にたまたま見えただけだ、すぐにまた隠れてしまうだろう。どうせなら山頂から見たい。山頂まで200mくらいだろうか。ダッシュで行くから待っててくれ。
平坦な稜線を走り、最後の登りを駆け上がって劔御前に着いた。目の前にはガスに巻かれつつある剱岳が聳えていた。
うん、ちゃんと山頂からの景色を見せてくれている。どうやら今回の山旅も祝福されているようだ。
そんな気持ちを胸にして、雷鳥沢へ下山した。
今夜もここに宿泊する。
夕飯は昨日に続いて茹でただけのマカロニだけど、貧相な食事でも心は満たされていた。
つづく