ゆるキャン△ in 劔沢&雷鳥沢 – その4

四日目の朝、ごそごそと寝袋から這い出した。今日が最終日だ。

室堂まで歩くだけではつまらないし、かといってあまり長時間の登山もやめておきたい。なにせ帰りの運転も残っている。

そこで奥大日岳まで行ってもどってくることにした。大日岳はまたの機会だ。

歩き始めは快晴だったが、すぐにガスが出てきてしまった。周囲の風景はまったく見えない。

まあ、しかたない。ここまで3日間が思いのほか好天だった。最終日くらいはしかたあるまい。

天気は悪くてもいちおう山頂までは登っておく。奥大日岳へのだらだらした登りを黙々と歩いた。

山頂は多くの人で賑わっていた。しかし周囲の山々はガスの中だ。しばらく山頂にいたが、天候が回復する気配もないので、諦めて下山することにした。

帰りに奥大日岳の最高地点にも寄った。縦走路から外れて少し歩くとすぐに着く。こちらの方が5メートルほど高く見晴らしもいいのに、なぜかオフィシャルな山頂とはされていない。

当然だが、こちらの山頂からも景色は見えない。ここが最後のピークになるから少々残念ではある。

これで帰るのかと思うとなかなか踏ん切りがつかず、山頂でぼんやりしていた。他に人もいないので、静かである。

ふと気づくと、南側のガスが取れて雲が薄くなっていた。ゆっくりと風景が姿を現わし始めている。

薬師岳への稜線、その奥には特徴的な笠ヶ岳、中央に構えるのは鷲羽岳、槍から穂高の稜線も見える。

やがて、立山にかかっていた雲も消えた。先ほどまでは真っ白だった空間に、突如として大きな山が出現した。

最後の最後に来たな。ねばっていた甲斐があった。やはり最後はこうでなくちゃ。そしてほんとの最後には、あとひとつ…。

ついに北側のガスも消えた。ようやく現れた剱岳。真打ち登場だ。

思い返せばこの四日間、肝心なところでは晴れてくれた。そしてそれは最後のピークでも途切れることはなかった。

山々に歓迎され祝福された四日間が終わろうとしている。

ありがとう立山、ありがとう剱。また来る時も笑っておくれ。

2020年9月