ゆるキャン△ in 劔沢&雷鳥沢 – その2
夜になっても激しい風が吹いていた。
夜半の突風でペグが抜けて、30センチほどテントが動いてしまった。どうやら周りも同じ状況らしい。カンカンカンとペグを打つ音が聞こえてくる。脳の片隅で起きなきゃなと思いつつ、眠いしめんどうなので横になっていた。
明け方、まだ暗いうちに外へ出てテントを固定した。風は強いままだ。張り綱をしっかり張り、ペグを深く打ち込んで上から石で抑えた。さらにテントの中にもいくつか大きめの石を入れておく。とにかく、帰ってきたらテントが飛ばされていたという事態だけは避けたい。
準備ができたら出発だ。夜明け前の濃い藍色の空がしだいに明るくなってくる。今日は雲が多くて、スカッと秋晴れとはいかなさそうだ。
一服劔から前劔へとザレた斜面を登っていく。前劔を超えると、これぞ剱岳といった岩場が現れてくる。
まあまあの人が登っていたが、さして渋滞になることもなく山頂に着いた。
高曇りだが周りの山々は見えている。
これくらい見えてくれてれば良しとしよう。
タテバイよりもはるかに怖いヨコバイを通過し、ザレた斜面をこんどは下って劔沢まで帰った。
劔沢にもどったらゆっくり昼食のつもりだったが、さっさと撤収して雷鳥沢へ向かうことにした。新たな登山者が続々と劔沢に到着していたから、雷鳥沢も間違いなく混雑しているはずだ。
乗越まで上がって雷鳥沢を見下ろすと、すでにかなりの数のテントで埋まっていた。時間はまだ早いから、これからさらに増えるだろう。
混雑する山を極度に嫌ったり、そんな山へ行くことを蔑んだりする人も少なくないが、私は気にしない。他人の行動で自分の感情が左右されるのは嫌なのである。それにそもそも、人も自然の一部なのだから、人がたくさん来るのは雷雨や吹雪のような自然現象のひとつなのだ。受け入れて対応するしかない。
雷鳥沢に到着し、なんとかスペースを見つけてテントを張った。
昼過ぎからずっと立山を隠していた雲も夕方には取れて、山並みが夕陽に赤く輝いていた。
つづく