奇石と太平洋、あるいは最後の登山 – 堅割山
宇都宮市内で痛飲した翌朝、どこか登ってから帰ろうと、家とは反対方向の海へと車を走らせた。向かうのは茨城県の堅破山。「タツワレサン」と読む。知らなければ読めない難読山名だ。
この辺りは同じ関東地方でも自宅からもっとも遠いエリアなので、なかなか来る機会がない。八ヶ岳や南アルプスよりも遠いのだ。
山間の集落をいくつか過ぎた先に車を停め、簡素な鳥居をくぐって登山開始。
寂れてはいるが、しっかり整備された登山道を登っていく。
烏帽子石や手形石に畳石とやや無理やり感のある奇石に、どんより淀んだ弁天池を通過し、まだ新しい仁王門をくぐると釈迦堂のある広場に着いた。そこから長い石段を上がると黒前神社だ。
神社の少し先が山頂になる。
展望台の螺旋階段が、宙空へと続いていた。
展望台に登ると、穏やかな山並みの背後には、太平洋が広がっていた。
曇ってはいるが、なかなか気分がいい。
ここまで30分少々、あっという間の山頂だった。
帰り道で太刀割石に立ち寄った。
奇石というのはだいたいどれも、無理やり感があったりショボかったりでがっかりするばかりなのだが、これは違った。大きな丸石が、まるで太刀で一刀両断されたかのように、きれいに真っ二つに割れている。堅割山の三滝七奇石のうちで、水戸光圀公が「最も奇なり」と感嘆したのが、この太刀割石である。
ほんとは周回するつもりだったが、伐採作業のために神楽石や奈々久良ノ滝へは通行止になっていた。しかたないので登ってきた道で下山した。
ぶらぶら寄り道しつつ歩いたが、それでもほんの1時間半の山行であった。
これからは気軽に遠出できない世の中になるかもしれない。昨夜の宇都宮でも、観光客の多く来る店では店内飲食ができなくなっていた。今日も、気にし過ぎなのかもしれないけれど、なんとなく地元の人々の目が厳しいようにも感じられた。もしかすると最後になるかもしれない登山が、やけにあっさり終わってしまったのは残念ではあるが、またいつかなんでもない日々がもどってくるのを待ちたい。
2020年4月
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