冷たい肉そば / 肉中華

谷地に来るのは二度目になる。それほど見どころもなく、あまりぱっとしないとディスっておきながら谷地を再訪したのは、冷たい肉そばを食べるためだ。

ラーメンに蕎麦にうどんにと山形には独特の麺類が豊富だが、その中でも冷たい肉そばは傑作中の傑作だ。県内各所で食べることのできる冷たい肉そばだが、谷地こそが発祥の地であり本場なのである。谷地の街中で観光客を見ることは稀だが、冷たい肉そばを提供する店の駐車場には県外ナンバーの車がずらりと並び、人気店には長蛇の列ができる。

元々は馬肉で出汁を取り馬肉を具にしていたというが、馬肉の供給が途絶えて以降は親鳥を使用している。親鳥の旨味を蓄えた透明なスープは上品で繊細だ。太くて黒い田舎蕎麦が親鳥の澄んだスープに浸っている。具は親鳥の薄切りで旨味と噛みごたえがある。

冷たい肉そばの麺を蕎麦から中華麺に変えると肉中華になる。といっても、ただ麺を変えただけではなく、中華麺に合うようにスープにはコクと甘味がわずかに足されているようだ。

山形では冷たい、もしくはぬるい麺類が広く好まれていて、夏だけでなく一年中食べられている。肉中華も冷たいのが基本だ。店によっては暖かい肉中華もあるが、肉そば同様に冷たいのが好き過ぎて、あたたかい肉そばも肉中華もまだ食べたことはない。

ちなみに、天童市を発祥とする鳥中華なる麺料理もあるが、これは肉中華とはまた別物であった。