十文字ラーメン

十文字がどこにあるのかすぐにわかる人は、地元民以外で多くはないだろう。

秋田県南部の横手市の南、湯沢市と接するあたりに十文字地区はある。車で走るとあっというまに通過してしまい、幹線道路にチェーン店が点在する、どこといって特徴のない地方の街に見える。

しかしこの狭い地区に、共通の特徴を持つ地ラーメンが存在し、昔ながらの店がいまもその味を守っている。

煮干し、鰹節、昆布の和風出汁で、旨味や甘味のほとんどないあっさり醤油味スープは、現代的な感覚だと極端に薄味で、お湯に近いと感じるかもしれない。麺はチリチリの細麺で、具には麩が入ることが多いようだ。

特筆すべきは値段の安さで、この令和の時代になっても、中華そば一杯がいまだ500円で提供されている。

どの店も賑わっていて、GWなので他県からの客もいたが、多くの地元民も訪れていた。

昔の味がいまも愛され続けているのは、しみじみ尊い。