久留米の夜 – 餃子 / おでん / ちゃんぽん
正月三が日の久留米の街は閑散としていた。開いている店もあまりなく、人通りも少ない。
活気ないなあと感じたけど、観光地でもないんだから正月はこんなものだろう。シャッター通りになって人の気配も消えた数多の地方都市と比べたら、賑わってるほうかもしれない。

さて、夜は何を食べよう。行きたい店があったのだが、候補の一番手も二番手も正月休みだった。行くあてを失って、ぶらぶら歩いて良さげな店を探していると、五十番ギョウザの看板に明かりが灯っているのを見つけた。のれんも出ている。やってるんだ。
餃子の五十番、昨年初めて訪れた久留米で店の佇まいに誘われて入ったら、潰れたような独特の形の餃子の美味しさに仰天した店だ。焼き餃子と水餃子の他は、ごはんとキムチしかメニューにないストロングスタイルを貫いている。よし、まずは餃子で一杯といこう。

一年ぶりの五十番の餃子は、記憶の味そのままだった。一人前ごとに熱々に熱した鉄鍋で焼かれた餃子を、辛味を加えたタレに浸して食べる。
この美味しさはどこからくるのだろう、集中して味わってもよくわからない。なぜこんなに美味しいのか説明できないほどに美味しい。

昨年は焼き餃子をお代わりするのに夢中で食べなかった水餃子も今回は注文した。店員さんの勧める通りに、スープにタレを加えて食べる。焼き餃子のパリッと感や油っぽさは当然ながら無く、さっぱり食べられる。焼き餃子をお代わりする合間に食べるのにちょうどいい。
ああ、もっと餃子をお代わりしたいという欲望を抑えて、焼き二枚と水一杯に焼酎のお湯割り三杯で店を出た。

二軒目はあの屋台へ行こう。昨年見つけてとてもそそられたものの、すでに満腹を通り越していたので諦めた店だ。五十番に来る前に見た時はまだ開店準備中だったが、夜も更けてきたしそろそろ営業してるだろう。

暗闇にポツリと屋台の看板が点灯していた。お客さんも入っている。夢屋というのが屋号なのだろう。チャンポンを売りにしてるようだ。若干の入りにくさを感じつつ、酔った勢いでビニールシートをかき分けて入った。
屋台の内部は、外見から想像したのとは異次元に立派だった。カウンターだけでなくテープル席まである。カウンターの前には冷蔵ネタケースがあり、種々雑多の食材が並んでいる。メニューも豊富だ。おでんに焼き鳥、一品料理もさまざまあって、店主が中華鍋をあおっている。これはもう屋台ではなく店だ。ちゃんぽんで〆るつもりで入ったが、他のものも食べてみたくなる。

おでん種に餃子巻きがあったので早速注文した。ずっと食べてみたいと思っていたが、なかなか出会う機会がなくて食べられずにいたおでん種だ。他は九州らしく丸天と、卵もお願いした。
餃子巻きは、想像してたのとは少々違っていた。餃子を具にした練り物だろうと想像していたのだが、餃子をすり身で包むというよりは、餃子がすり身をまとっている。餃子を完全に包んでしまうと、大きくなり過ぎるからかもしれない。はみ出た部分は煮込まれてとろとろになっている。これが餃子巻きの標準スタイルなのかどうか、またどこかで見つけたら確認のために食べてみよう。

雰囲気に酔ってお湯割りが進む。最後はもちろんちゃんぽんで〆だ。
店主が中華鍋で作るちゃんぽんは、思いのほかあっさりしていた。日頃食べ慣れているちゃんぽんは、かなり旨味マシなのがわかる。長崎の有名店のような高価な食材は使っておらず、庶民的なちゃんぽんだ。
ちゃんぽんというのは、元々は庶民のざっかけない食べ物だったという。もしかしたらこれが、原初の姿を今に伝えるちゃんぽんなのかもしれない。

いい感じに酔っぱらって、静かな夜の久留米の街をふらふら歩いた。

いい街だよな。また来よう。行きたい店も食べてみたいものも、まだまだたくさんあるのだし。
2026年1月





