中国地方唯一の日本百名山に登る – 伯耆大山

階段、階段、階段、階段…

登り初めてからずっと階段だ。いったいどこまで続くのだろう。

階段、階段、階段、階段…

終わりの見えない階段を登る。

今日は大山に登っている。「おおやま」ではない、「だいせん」だ。そう、日本百名山の大山である。

さすが日本百名山だけあって、登山口に近い駐車場は夜明け前に満車になり、その後も続々と到着する車は周辺の駐車場へと向かっていた。

それでも山が渋滞するようなことはなく、日本アルプスや富士山とは違ってのんびり気楽に登れる。

しかし階段だ。のんびり気楽だけど階段だ。これはいくらなんでも過剰整備ではないだろうか。

山頂近くになって傾斜がゆるやかになると、ようやく階段が終わった。そしてこんどは木道だ。過剰整備はさらに続く。

木道がぐるっと楕円形を描いてもどってきている。楕円形の輪の中には避難小屋があり、そこは土を踏むことができる。楕円形の最奥部が最も標高が高く、そこが山頂のようだ。

山頂にはベンチが設えてあった。そのベンチというのが、円形劇場の観客席というか、地方球場の外野席というか、木道に沿って段々になっていて、並んで座って避難小屋を見下ろすようになっている。

いやはや、なんとも過剰な…。

なにはともあれ、とりあえず大山に登頂だ。ここまで、雪渓と木道が途切れていた箇所以外の、登山道の99%は階段か木道を歩いてきた。

大山の山頂はいちおうこの弥山ということになっているが、山域全体の最高地点は標高1729mの剣ヶ峰だ。弥山の標高は1709mしかない。しかし弥山から先の縦走路は、崩落が激しいとの理由で通行止めになっているため進むことはできない。

弥山の最高地点もほんとはこのコロッセウムではなく、縦走路をわずかに進んだところにある。立入禁止ロープのすぐ先に見えているのがほんとの山頂なのだろう。

確かに脆そうだし痩せてはいるけど、ぜんぜん行けそうに見える。この程度の道なら群馬県では一般ルートだ。

しかしここは日本百名山だ。中には危うい登山者も来るだろう。ここまでの整備過剰な登山道が当たり前だとしたら、この先は危険である。

通行禁止にする気持ちもわからなくはないが、それにしても過保護だよな。「自己責任」と言う言葉が世間に蔓延してるわりには、自己の責任で行う行為が制限される。過剰に過保護なのは事なかれ主義の故だろう。だれもが責任を負いたくなく、非難の集中砲火を避けるためにどんどん不自由になっていく。

私の所有する登山の本には剣ヶ峰が紹介されている。発行は1992年。この頃はまだ通行禁止措置はとられていなかったのだろう。世間に自由な空気が流れていた最後の時代である。

登りは夏山登山道を使ったので、下山は途中で右に折れて行者登山道を下った。こちらの登山等ももちろんよく整備されている。

下り切ったところの沢からは、威風堂々とした大山の稜線が広がっていた。

うん、いいな。この風景を見れただけでもここに来た甲斐があった。

2025年5月