大山へと向かう道 – 所子

集落から望む大山が猛々しい。

大山は見る方向によって大きく印象が異なる。東側からだと穏やかな山だが、西や北からだと厳つい山容だ。

大山の北に位置する所子の集落は、中世に農村として成立し、近世になって拡大した。

集落内を大山参詣道が通じていて、近世から近代にかけての邸宅が景観を構成している。

この日は、江戸時代に庄屋を務めた門脇家住宅の一般公開日に当たっていたため、お屋敷の中へ入ることができた。

村の外れにはサイノカミさんが祀られている。男女の双神で、災いや疫病が集落内に入るのを防いでいるというから、道祖神と同様の神様だ。藁馬や大草鞋の新しさから、今でも熱心に信仰されているのがわかる。年に一回、12月に作り替えているそうだ。

それにしてものどかだ。東日本だと村落は山間か山里にあることが大半なので、開けた平野の村の風景は新鮮だ。

晴れた日は大山がよく見える。幼い頃からこうして眺めていたら、故郷の山として深く心に刻まれることだろう。

故郷の山があるっていいな。故郷の山に向かえる人生はうらやましい。

2025年5月