Merry Christmas from 将監峠 – 竜喰山 / 大常木山
クリスマスは好きじゃない。いい思い出がまったく無い。語ると長くなるのでやめておくが、とにかくクリスマスは好きじゃない。
2022年は24日が土曜日で25日が日曜日という最悪のカレンダーだった。浮かれた街で過ごす気には到底なれないので山へ逃げる。それもひと気のない山でなくてはならない。間違っても燕山荘とかに行ってはいけない。
そこで将監峠だ。ここなら浮かれたカップルなんて来ない。来るのは同類だけだ。
と思ったら、誰も来なかった。
まあ、そうか。小屋もやってないしトイレも使えないしね。誰に気兼ねなく過ごすことができる。いいじゃないか。
チキンをローストしてワインを飲み、丁寧に運んできたクリスマスケーキをひとりで食べた。いいんだよ、クリスマスは好きじゃなくてもケーキに罪は無いのだから。
クリスマス当日はテント装備をデポしたまま、将監峠から竜喰山へ向かった。
峠からの登りは、薄い踏み跡が雪でまったく見えず、急登を直登した。
ひいひい言いつつ急斜面を登り切ると視界が開ける。富士山に南アルプスもばっちりだ。こんな天気のいい日に…いや、いいんだ。展望の良い山だと浮かれたカップルに出会ってしまう可能性が高い。今日は絶好の奥秩父バリエーション日和だ。
竜喰山の山頂は予想通りのヤブ山だった。いいんだよ、いいの。
稜線を先へ進む。バリエーションルートだが比較的しっかりした踏み跡があると聞いていたが、積雪でまったくわからない。たまにあるのは動物の足跡ばかりだ。シカにウサギにクマもある…。
踏み跡が無くても尾根上を進めばいいかというと、そう簡単にはいかない。いくつもの小さなコブを越えなければならないのだが、それを右から巻くか左から巻くかそれとも乗り越えるか、ひとつひとつ判断しなければならない。
巻いても巻き切れるかわからないし、登っても向こう側が降りられるかもわからない。雪の付いた岩場もあって、登るだけでもひと苦労だ。
そうして、ずいぶん時間をかけてたどり着いた大常木山も予想通りのヤブ山だった。いいんだよ、いいんだってば。
積雪で不安定な山頂の奥まで進むと、ヤブの切れ目からは西仙波に東仙波、そして立派な和名倉山が見えた。うん、これで満足。
大常木山からは再びめんどうな稜線を大ダルまで下って一般ルートに合流した。
ほんとは飛龍山まで登るつもりだったけど、ノートレースの稜線で消耗したし時間を使ってしまったし、それになによりでっかい山塊を目の前にして、あれに登るのはつかれるからやめよ…という気持ちになったのでやめた。いいんだよ、飛龍山は何度か登ったことあるし、今から下山してももう馬鹿騒ぎは収まってるだろうから。
一般ルートで将監小屋までもどり、三ノ瀬に下山した。
冬の三ノ瀬は人の気配が無い。そういえば登山中も誰にも会わなかった。昨日から二日間、まだ誰にも会ってない。
目的は果たした。このまま誰とも会話せずに真っすぐ帰宅しよう。
2022年12月