365日目の登頂 – 祖母山
ガスっているが、山頂まで行っておこう。
尾平登山口から九合目小屋まで登り、薪ストーブの暖かさに腰が重くなりかけたが、意を決して外へ出た。
ちょうど一年前、2019年1月1日の早朝に、電波も入らない山奥の登山口で、携帯も財布も車の鍵も車内に残したままサンダル履きでドアをロックしてしまい、登らずして敗退することとなった祖母山に365日目にして登頂だ。
年の初めのマヌケな失敗を大晦日に取り返した。
満足して小屋まで降りてくると、空が明るくなってきた。雲が切れて青空がのぞき、それは次第に広がっていく。
もう一回登るか。
再び山頂に立つと、数十分前にはまったく見えなかった景色が広がっていた。
ガスがどんどん抜けていき、山々が姿を現していく。
よし、明日からはここを歩くんだ。この先の縦走路に思いを馳せた。
小屋は、年越しに集まった常連さんで賑やかだった。地元の年輩の方々ばかりで、古き良き山小屋の雰囲気を久方ぶりに味わった。
翌日、2020年の元旦は、完ぺきな朝だった。
薄暗かった空はしだいに明るくなっていく。古祖母山から傾山へと続く縦走路。そのずっと奥は大崩山だ。九重に阿蘇、由布岳までもよく見えている。平野からいきなりぽこっぼこっと山塊の立ち上がる九州独特の景観だ。
やがて東の空はオレンジ色に輝き、2020年の初日の出が昇ってきた。
山頂に居合わせた数十人の登山者で万歳三唱し、新しい年の始まりを祝った。
いい一年になりそうだ。
2019年12月