ゆるやかに、たおやかに – 障子岳 / 古祖母山 / 本谷山

祖母山の山頂で初日の出を拝み、新しい年を祝ったら、そろそろ出発だ。先は長い。あまりゆっくりしてもいられない。

ひと晩を共にした方々に見送られて、縦走路へと踏み出した。

山頂に居合わせた30人以上のなかで、縦走路へと進むのは他にだれもいなかった。この先には静かな山が待っている。

山頂からの下りは、切り立った岩場に氷が張り付いていた。足を滑らすと数十メートル下の地面に叩きつけられてしまう。慎重に一歩づつ、確実な足がかりを探して降りる。

危ないなと感じたのはここだけで、その後はずっとのどかな縦走路だった。

天狗岩、障子岳、古祖母山と昨日眺めていた山々を超えていく。冬の木々は葉を落とし、日の光が暖かく差す。起伏は緩やかで穏やかだ。

空気は透明で空も山並みも美しい。こんな良い日に縦走できる幸せ。

なんとなく、奥多摩か奥秩父あたりの里山を歩いてるような気分になる。

傾山がだいぶ近づいてきた。振り向くと見える祖母山は、進むにつれて少しづつ角度を変えていく。

ここまで軽快に歩いてきたが、尾平越で「縦走路中間点」の表示を見たときは、まだ半分かよとうんざりした。給水して2キロ重くなったザックを背負い直して、この先の登りへ向かう。

笹原の稜線はまるで深南部のよう。本谷山への緩やかな登り道をゆっくりと登っていく。

見渡せば、ここまで歩いてきた稜線。噴煙を上げる阿蘇山。いつ見てもカッコいい九重山。

だいぶ日も傾いてきた。あと少しがんばろう。

九折越小屋に到着したのは、日が落ちてうす暗くなりかけた時刻だった。

前夜の賑やかさとはうってかわって、今夜はひとりの静かな夜だ。