強風の雪山と雪のない冬山 – 阿弥陀岳 / 入笠山

強風に煽られ、ザックごと体を持っていかれそうになる。岩陰に体を潜めて風をやり過ごした。飛ばされたら落ちる。慎重に行かねば。

樹林帯ですでに風は強かったので覚悟していたが、森林限界を超えてからは、遮るものなく強風に曝されている。西斜面に伸びる御小屋尾根は、冬の西風をまともに浴びる。

景色は良い、天気も良い。岩稜の縦走は気分が良い。岩に氷が張り付いていて歩きにくいが、そんなことはたいした問題じゃない。

こちら側から阿弥陀岳に登るのは初めてだが、これはなかなか心踊る稜線だ。

雪の付いた斜面を上がり、山頂に出た。

正面には堂々たる赤岳。そこから連なる主稜線。そういえば、阿弥陀岳で晴れたのは初めてだ。いつもガスに包まれてた記憶しかない。来慣れた山域でも、初めての角度から眺める峰々は新鮮だった。

赤岳まで行きたいところだが、ここまでにしておこう。強風と凍った岩場に手間取り、予定以上に時間と体力を消費した。それに今日は、登山でなく下山後がメインイベントだ。

ゆっくり下山し、北沢を回って美濃戸から美濃戸口まで歩いて戻った。

夜は、東西から集まった山仲間との毎年恒例になりつつある忘年会。賑やかで楽しく夜は更けていった。

大酒と大騒ぎの翌日は、みんなで入笠山へ。

12月の半ばだというのに、雪はまったくない。スキー場の人工降雪機が、頼りない雪を虚しく吐き出し続けている。

湿原も完全にむき出しだった。これは冬の景色ではない。

小屋の前にずらりと並べられたレンタルスノーシューの出番もない。

雪はなくても空は青空。

山頂からは、南北中央アルプスに八ヶ岳、どれもこれもしっかり見えていた。

うん、いい気分だ。来年もまた、みんなでこの景色を見れたらいいな。

いつまでもいたかったが、そろそろ下山の時間だ。楽しかった二日間もまもなく終わる。

また会う日まで、ごきげんよう。

2019年12月