米沢ラーメンを求めて – 山形ラーメン探訪記 3

米沢ラーメンといえばご当地ラーメン界隈ではそれなりに名が知れているほうだと思うが、いまだかつて食べたことはない。都内で米沢ラーメンを掲げる店に出会ったこともない。

いったいどんなもんだろうと、米沢ラーメンを食べるために米沢まで来た。といってもどの店に入ったらいいのかさっぱりわからない。なにせ米沢市内にはラーメンを提供する店が100軒もあるというではないか。

支那そば 熊文

ぶらぶら歩いて一軒のラーメン店を選んだ。『熊文』というその店の看板に「支那そば」と表記されていたことから、歴史のある店だろうと推測したからだ、というのは後付けの理由で歩くのに疲れたからだった。

ところが、開店10分前にもかかわらず一人の客も並んでいない。やめといた方が賢明かなと考えていると、開店時間になったらお客が続々とやってきてすぐに満席になった。どうやら地元民は早くから並んだりはしないようだ。

動物系と魚介系を合わせたスープにはほのかに甘味がある。細麺のちぢれ麺はやわらかめだがもちもちしている。焼豚はみっしりと噛みごたえがある。

バランスの取れた完成度の高いラーメンだった。

さて、一杯食べただけでは米沢ラーメンがどんなものかはわからない。東北方面へ出かける時は米沢で昼になることが多いので、機会があるごとに食べてみることにした。

そば処 かわにし

二軒目に訪れたのは『かわにし』だ。郊外に美味しいラーメン店があると聞いてやってきたのだが、ほんとにこんなところにラーメン店があるのかと疑うような長閑な光景が広がっている。

田んぼの中の小集落に『かわにし』はあった。いちおうここも米沢市内になるが、市内という言葉からは程遠い環境だ。

看板には「そば処」とあるが、この「そば」とはもちろん中華そばのことで蕎麦屋ではない。メニューに記された店名は『かわにし食堂』となっていたものの、提供するのはラーメン類だけだ。ライスすらない。

細ちぢれ麺とみっしり焼豚は米沢ラーメン共通のようだ。透明度の高いスープが美しい。錦糸卵が彩を添えている。

スープを一口飲んで瞠目した。鶏ガラをベースにして椎茸や昆布を加えているのだろうか。主張し過ぎず、かといって物足りなくもなく、しみじみ旨い美しいスープだ。もちろん麺も旨い。あっさりした焼豚も全体の雰囲気にマッチしている。美しい、美し過ぎる。

地方のラーメン店では稀に、これは究極ではないかと思うラーメンに出会うことがあるが、かわにし食堂のラーメンはまさにそんな一杯だった。

そばの店 ひらま

かわにし食堂を後にして車を走らせると、5分ほどのところに別のラーメン店があった。『そばの店 ひらま』と看板にはあるが、この「そばの店」とはもちろん中華そばのことである。

驚くのはその混み具合だ。店頭や店裏の駐車場は満車で、待ちの車が路上に並ぶ。道を渡った反対側の空き地には、わずかのスペースを埋めるようにして車が停められている。そして店の出入り口から続く長蛇の列。カオスだ。

有名店なのだろうか。その日は『かわにし』で食べた直後だったし、なによりこの行列にはちょっと並べないなと思い通り過ぎたが、ずっと気になっていた。

数ヶ月後、開店40分前くらいに近くを通ることがあったので、ものは試しと見に行ってみると、すでに20人ほどが並んでいた。

開店40分前で20人!だが、その時に思ったのは、たったの20人しか並んでない!だった。駐車場にもまだ空きがある。この機会を逃す手は無い。

まろやかスープに細ちぢれ麺、みっしり焼豚という米沢ラーメンの基本形を踏襲しつつも、スープには脂分があって醤油感も強い。もちろんこれは他の二店に比べればである。気にせず食べたら、どこも同じ味じゃんと思うかもしれない。

だが、このわずかの差異により、それぞれの店にファンが付き、あるいはお気に入りの一杯を求めて彷徨うことになるのだ。

旅は続く