青空に凛々しく白銀の峰 – 鹿俣山 / 獅子ヶ鼻山

オープン前のスキー場は恐ろしい。駐車場ではヤングな兄ちゃんたちが上半身裸で大騒ぎしている。すでにイチャイチャしているアベックもいる。みんなやたらとハイテンションだ。見回したところ、ボッチなのは自分だけだ。

無料の駐車スペースに停めたかったのだが場所がわからず、スキー客の車列に流されるようにしてスキー場に入ってしまったのだった。やれやれ。

盛り上がる駐車場からそっと離れて登山を開始しようとしたが、取り付きがわからない。しばらくうろうろしたものの、案内板も道標も見当たらず、そうこうしているうちにスキー場のオープン時間になってしまった。

気は進まないがリフトに乗るか。だいぶ出遅れたししかたない。

課金して、座ってるだけで標高を300m上げた。

リフトトップの裏手から山に入り、20分も登れば鹿俣山の山頂だ。ここからは冬道を獅子ヶ鼻山まで向かう。

なんとなく踏跡があるので、なんとなく進んでいく。消えている区間も多いが、稜線を行くだけだから問題ない。

最初はわかんを装着していたが、細かいアップダウンが多くて傾斜も急なので、すぐにアイゼンに代えた。

たいした積雪ではないし広い尾根の上を歩いているので、雪庇の端にさえ近づかなければ踏み抜くことはない。危険箇所も無いので、のんびり歩く。

視界が開けると前方に武尊山が現れるはずなのだが、残念なことに山頂は雲に隠れている。他は晴れているのに、武尊山だけが雲の中だ。

次第に獅子ヶ鼻山の尖った頂が近づいてくる。しかしその背後の武尊山は依然として現れてくれない。

晴れろ晴れろ。雲よ取れろと念じながら、最後の登りを登っていく。

獅子ヶ鼻山は稜線上に突き出たとんがりピークだった。山頂は狭く、人ひとりが立つのがやっとである。上部が雲に隠れた武尊山も下の方は見えている。それから推測するに、ここから眺める武尊山は実に雄大なものだろう。

晴れろ晴れろと念じて待つ。やがて、なんとなく雲が薄くなってきたなと思ったら、唐突に頂が現れた。迫力ある姿に圧倒される。武尊山の山頂に登山者の姿も見える。あっちもいま盛り上がっていることだろう。

このまま稜線を歩いていきたくなる。見てるうちに行けそうな気になるが、よくよく観察すると登りはかなり険しい。途中が穏やかなので騙されそうになるが、そもそも獅子ヶ鼻山のすぐ先は絶壁で下りられない。まあ、簡単に行けるならみんな行ってるよね。

ようやく姿を見せてくれた武尊山は、しばらくののち再び雲の中に消えた。すっきり晴れてはくれなかったが、これが見えたからよしとしよう。

帰り道でも往生際悪く何度も振り返って確認する。雲は厚くなったり薄くなったりするものの、何度見ても山頂は隠れたままだった。

樹林帯に入る手前でこれで最後だなと振り返ると、青空の下に白銀の武尊山が輝いていた。見たかった景色がやっと見れた。もうちょっと山頂でねばっていればよかったか。でも満足だ。

下山はリフトを使わずに歩いて下った。途中でスキー場内に出てしまい、ゲレンデの端を歩いた。まったくみんな楽しそうだ。別にさみしくはないが、少々うらやましかったりはする。いいよな、早朝の駐車場で上半身裸になってはしゃげるのはうらやましい。

歩行時間5時間。駐車場代1000円+リフト片道600円。景色は良かったが、コスパはいまひとつだったかもしれない。まあ、お手軽に絶景が見れて雪山も楽しめるから良いのか。

2024年2月