北アルプスでテント泊 – 燕岳 / 大天井岳

水と食料と酒とテント泊装備の詰まった重いザックを背負い、合戦尾根の急登を喘ぎ喘ぎ登った。

燕山荘に到着したときには、もうここでテント設営したいなという気持ちになっていた。ハイシーズン前なので、テントサイトには余裕がある。だが、ここでは泊まらない。

北アルプスのテント泊は、ソロの場合で一泊3千円というふざけた料金設定の上に、人気の場所は完全予約制という不便極まりないシステムになってしまった。コロナ対策という名目ではあるが、油断しているとこの状況が定着しかねない。抗議の意味を込めて、今年は北アルプスへは行かないことに決めていた。だが、ひらめいた。小屋開け前に行けばいいじゃないか。それなら無料で張り放題だ。

そういうわけで、すでに小屋開けしている燕山荘は通過して、大天井岳へ向かうのであった。

燕山荘を過ぎると、登山者はパタリと消えた。見通しの良い稜線を気分良く進む。

穏やかに見えた稜線も、意外と起伏があり、登ったり降りたりで体力を消耗する。背中のザックがずしりと重い。目的の山はまだまだ遠い。

蛙岩を超え、大下りの頭から鞍部に降り、その後も登ったり降りたりのくり返しだ。遠くに見えた山々が次第に近づいてくる。

そして最後に眼前に現れるのが、切れ落ちた鞍部から急峻な角度で一気に上昇していく大天井岳の北側斜面だ。正直、この登りを見たときは心が折れかかった。いまはまだ残雪期、トラバース路は使えないので直登しなければならない。

これ登るのかよ…。

重い荷物を背負い、重い足取りで登っていく。直登コースはザレでいるので、慎重に足を運ぶ。遅々として進まず、登っても登ってもゴールが見えてこない。予想していた到着時間など、とっくにオーバーしている。

それでも登り続けていれば、いつかは着く。傾斜が緩やかになり、山頂の祠が目に入ったときは、ようやく終わりかとホッとした。

だれもいない山頂に腰掛けて、周囲を見渡す。それにしても良い天気だ。目の前の槍穂高はもちろん、裏銀座から北へ向かって連なるアルプスの稜線がどこまでも見えている。こんな好条件の日もそうそうない。

ここまで来れば慌てる必要もない。日没直前まで、ゆっくりと過ごした。

翌日も好天だった。

テントを撤収し、昨日来た道を歩いて帰る。燕山荘に宿泊して大天井岳ピストンする人たちだろう、何人かとすれ違う。

燕山荘までもどり、ザックをデポして燕岳へ向かった。

ここへ来るのは何年ぶりだろう。青い空と白い花崗岩のコントラストが美しい。変わらず良い山だ。

燕岳へ登り、その先の北燕まで足を伸ばした。

燕岳の山頂は狭いが、北燕はそれよりは広く、見晴らしも良い。

昨日は真正面だった槍穂高は遠ざかり、目の前は裏銀座から後立山、そして白馬へ続く秀麗な稜線。剱岳もだいぶ近づいた。

登ったことのある山も多いが、まだまだ未踏の山もあるし、繋がってない稜線もある。

今度はあそこからあそこへ歩こう、そんなことを思いながら眺めていると、あっというまに時間は過ぎていった。