お山の気持ち – 武甲山

聳える武甲山。

秩父の風景には、なくてはならない存在感です。

町から見るとピラミッド様のとんがり山頂ですが、裏側はぽっこり丸っこい。

超良質石灰岩の北斜面はざっくり削られ、いまのような姿になってしまいました。

この姿を見て何を感じますか?

痛々しい? 悲しい? やるせない? 腹が立つ?

どれもわかるけど、でもなんだか釈然としない気もします。

戦前から大規模に開発されてきた武甲山の石灰岩は、秩父の経済だけでなく、高度経済成長期の日本の発展をも支えていました。ビルや港や高速道路や、首都圏の建築物の多くに武甲山を削ってできたセメントが使われています。

わたくしが住んでる築40年の団地も、もしかしたら武甲山でできているかもしれません。

山を削るのは痛々しい。わかります。

でも、山を削った結果の経済発展を謳歌しつつ、山を削るのを批判するのには、やはりなんだか釈然としない気がするのです。

声高に自然保護を叫ぶ前に、自分の足元を見つめた方がいいのではとも思います。

いまわたくしたちが、のほほんと山に登ったりしてられるのも、武甲山のおかげなのかもしれません。

山に心があるのなら、現在の日本の発展を見て、武甲山はなんて思ってるでしょう。

おれを犠牲にしやがってとか、自然を破壊するなんてけしからんとか思ってるでしょうか。

山は、そんなケツの穴の小さいこと言わないんじゃないかな。

自らの身を削って日本の発展を築いたこと、誇らしく思ってるんじゃないでしょうか。それとももっと高い視点から、人間の営みを暖かく見守ってくれてるんじゃないでしょうか。

われわれはただ、お山の恵みに感謝の気持ちを忘れなければいいのではと思います。

正面からだと大きく削られているように見える武甲山も、横から見るとまだ山頂から200mほど掘り下げられただけのよう。このままの斜度で掘り下げていっても、いままでの5倍以上は石灰が取れそうです。

お山の恵みは尽きません。