山の上の湿原へワタスゲを見に行く – 田代山 / 帝釈山
夏の光に輝く緑の湿原、微風にゆれる純白のワタスゲ、そんな風景を求めて田代山へ向かった。
何年も前から登りたいと思っていた田代山だが、どうせ登るならワタスゲの最盛期に登りたい。しかし、ワタスゲシーズンは天候の安定しない日が多い。脳内風景では、一面のワタスゲと緑の湿原と夏の青空はセットである。最高の一日を待っているうちに何年も経ってしまった。
だが、今日がその日である、はずだ。
猿倉登山口から一時間も登り、樹林帯を抜けると小田代だ。緑の湿原に白いワタスゲがぽわぽわしている。これだよこれこれ、これが見たかったのだ。
でも、ちょっと数が少ない。湿原もあまり広くはない。まあ、ここはメインではないから、先へ進もう。
小田代から20分ほどで田代山湿原に出た。
こちらは広い、果てしなく広い。思わず、うわ〜と感嘆の声が漏れる広さである。
田代というのは、元々は田んぼ、もしくは田んぼにするための土地を表す言葉だが、田んぼにするための土地=湿原でもある。現代では使われなくなった言葉であるが、山中の湿原には田代という名がよく残っている。
つまり田代山というのは、湿原山という意味になるのだ。田代山はその名に相応しく、山頂一帯が一面の湿原になっている。山の上にこれほど広大な湿原が広がっているのも不思議だ。まるで山頂が尾瀬みたいなものである。
ちなみに秋田県北部には田代岳という山があって、こちらも登ってみたい山のひとつである。
さわやかな青空の下、だれもいない緑の湿原を歩く。池塘は空の青さを集めて深い。
あ、あれ?ワタスゲ?ワタスゲは?
注意して見ると、白いぽわぽわした果穂がところどころに見える。が、しかし、あまりにも数が少ない。あれあれ?
最盛期を過ぎてしまったのか、それとも今年は当たり年ではなかったのか、ワタスゲに関してはだいぶ期待外れだった。
それでも湿原歩きは開放的で気持ち良い。
ほんとの山頂らしき最高地点は樹木に覆われていて、そこへは木道が通じていなかったので行けなかったが、このあたり一帯を山頂としているようだった。
景色を眺め、写真を撮りながらゆっくりと湿原の端まで歩いた。ここからは再び樹林帯に入る。
高い木々の生い茂る山道を下って登って、一時間で帝釈山に到着した。
こちらは湿原ではなく、あまり広くない山頂だが、見晴らしは良い。
日光連山に尾瀬の山々もくっきりと見えている。どこもかしこも絶好の天気のようだ。
いつもなら先へ進んで台蔵高山まで行くところだが、今日はのんびりここまでにしておく。ゆったりとした気分のまま山行を終えよう。
時間はたっぷりあるので帝釈山の山頂でのんびりしていると、反対側の馬坂峠から登ってきた登山者が到着し始めた。
そろそろ帰るか。帰りの田代山は、登山者で賑わっていることだろう。