冬の権現岳

雲の上に出た！

天気が悪く、登山口からずっと重たいガスの中だった。周囲が灰色だとモチベーションも上がらない。長い急登を、やる気なくだらだらと惰性で登ってきた。

前三ツ頭で樹林帯を抜けると、頭の上には青い空が広がっていた。眼下には雲海。ここまで雲の中を登ってきのだった。

急にやる気が出てきた。空が晴れれば気分も上がる。寝坊した上にペースも遅かったので、時間は押している。おそらく今日の最後の登山者だろう。

三ツ頭を超えて、権現岳への登りにとりかかる。

冬の権現岳は大好きな場所のひとつ。青空に輝く白い三角形。

今シーズン初めての雪山に、わくわくが止まらない。

山頂を過ぎ、分岐まで行った。キレットの向こうは阿弥陀岳に赤岳、横岳、硫黄岳。やっぱりここからの眺めはいいな。

いつまでも眺めていたいけど、そうもいかない。ギボシまで行きたかったが、ここまでにしておこう。いますぐ下山しても、途中で日が暮れてしまう。

また来年も来よう。こんな青い空の広がる日に。

八ツの峰々に別れを告げ、Uターンして歩き始めた。