夜明けのビクトリーロード – 甲斐駒ヶ岳

甲斐駒ヶ岳の向こうに太陽が姿を現した。

夜が終わり朝が始まるこの時間。一日のうちで最も美しいこの刻を、3000m級の稜線で迎える幸せ。

薄い紫と深い青に染まった空が、しだいにオレンジと水色に輝いてくる。

陽の光を浴びて、山もぼくも輝いている。

この稜線にただひとりきり。なんという贅沢なんだろう。

甲斐駒の山頂までもういくらもない。普通に歩けば二時間もかからないはずだ。もう登頂はまちがいないのだから、いましばらくこの贅沢な時間を満喫しよう。

ゆっくりゆっくりと山頂へ続く稜線を登る。

太陽はすっかり上ってしまい、あたりは早朝の清々しい空気に包まれている。

このためにここまで来たんだ。昨日のあの困難な登りも、全てはこの時のために。

最後の登りを上り切り、甲斐駒ヶ岳の山頂へ出た。

山頂はすでに多くの人で賑わっていたけど、こっち側から登ってきたんだぜとちょっぴり優越感。

ここまで来て初めて姿を現わす鳳凰山に富士山。

南アルプスの深い山並みが続いている。

辛い思いもするけれど、こんなすごい景色も見せてくれる。

これだから山は。