GW四国の旅 – 瓶ヶ森編

全員が山頂に着いたら、いったいどうなってしまうのかと心配になるほど次から次へと途切れなく登山者が登ってきて、すれ違いばかりで思うように進めない。土小屋への下山は大混雑だったが、土小屋を過ぎるとまったく雰囲気が変わった。

登山口から山頂への最短ルートは渋滞中の高速道路だが、それ以外は人の気配のないしんと静まる住宅地の路地裏だ。実際に誰も歩いていない。

帰りは巻くつもりなので、行きはすべてのピークに寄っていくことにした。林道から山道に入り、ちっちゃなコブをいくつか超えると、再び林道に降ろされて興ざめする。

稜線沿いにずっと通じてるこの林道は、車のCMに使われてから有名になったらしい。笹原の峰々を右に左に眺めて走るスカイラインだ。確かに晴天の日にドライブすればさぞ気持ちいいことだろう。しかし縦走登山者には少々目障りな存在でもある。林道はせめて峠越えまでにして、稜線の横移動は無しにしていただきたいものだ。

伊吹山という滋賀県にある百名山と同じ名の山があった。標高は1503mで、なんと百名山の伊吹山よりも高い。山頂付近は平坦で笹原が広がっていて、正面に瓶ヶ森を眺めながら歩く。百名山伊吹山にも劣らない良い山だ。そしてだれも登ってこない。

伊吹山から下ると舗装路だった。舗装路と平行した山道に入ったが、すぐにまた舗装路へ出されると、すぐ目の前がシラサ山荘だ。山荘は営業していないがテントは張れる。いいかげん疲れてきたのでここまでにしたい気持ちもあるけど、あと少しなので重い足を上げて先へ進む。

明るい笹原は終わり、深い森を登っていく。傾斜が急で、崩れているところもある。

ずっと見えてた特徴的な岩は子持権現山というらしい。基部を回り込むと社があり、その奥の岩には鎖が付いていた。どうやら登れるようだがパスしておく。縦走路からは外れているので登らなくても先へは進める。時間がだいぶ押しているうえに、雲行きも怪しくなってきた。それになにより、ほぼ垂直に見える岩を登るのはもういい。鎖場はお腹いっぱいだ。

森を抜け、舗装路に出たり入ったりを繰り返すようになると、ほどなくして瓶ヶ森登山口に着いた。駐車場があり、何台もの車が停まっている。もっと早い時間は大賑わいだったことだろう。

遅くなってしまったので、テントを張ってると暗くなりそうだ。駐車場からテント場へ向かえばすぐなのだが、先に瓶ヶ森に登ってから向かうことにした。明日はまちがいなく天気は悪いから、今日のうちに登っておく。

もはやすっかり疲れていて、背負った装備はずっしり重い。

まずは男山に登り、最高地点の女山へ向かい、瓶ヶ森ヒュッテ跡へ下った。

幕営場はGWまっただなかだというのに閑散としていた。

翌日は予報通りの雨。小雨なので歩くのに支障はなさそうだけど、真っ白で景色の見えない山を一日歩き、明日さらに強くなった雨に打たれて戻ってきて、そのまま運転して東京へ帰るっていうのは、できなくはないけど楽しい予感がしないので、今日のうちに下山しよう。

瓶ヶ森はガスに隠れて見えない。やはり無理して昨日のうちに登っておいてよかった。

昨日超えたいくつものピークを林道で巻いてしまうと、意外なほどあっさりと土小屋にもどってしまった。

やっぱ先へ進んでおけばよかったかなとチラリと頭に浮かんだが、いやいや続きは晴天の日にしようと思い直した。一日浮いた休日は何をしよう。帰り道はどこで何を食べようか。そんな俗世界のあれこれを思いながら、車のエンジンをかけた。