三連休三百名山三連登 二登目 – 七ヶ岳
高原山から下山して北へと車を走らせ、福島県に入って会津西街道沿いの食堂で早めの夕飯を食べた。ここで左へ曲がると尾瀬に至るが、右に曲がってさらに北上する。三連休なので、なるべく遠くの山に登りたい。
適当な道の駅で夜を明かし、翌朝は林道沿いの登山口に車を停めた。他に車はなく、ここに停めてもいいのだろうかと躊躇したが、林道が広くなってる部分にできるだけ寄せて停めた。がんばっても停められるのはあと二台だなと思ったが、この日ここに駐車して七ヶ岳に登った人は他にはいなかった。どうやら東側の平滑沢から登るのが一般的らしい。
平滑沢からではなく下岳登山口から登ろうとしたのには理由がある。下岳登山口から登った最初のピークは下岳だが、ここには七番岳という別名が付いている。七ヶ岳の山頂は一番岳ともいう。その間には二番岳から六番岳までが稜線上に並んでいる。
七つのピークがあるから七ヶ岳、そのすべてを超えて山頂を目指すのだ。
けっこうな急登で稜線に出たら、荒れ気味の登山道をしばらく歩いて下岳に着いた。なかなかに眺めのいい場所だ。
六番岳、五番岳、四番岳と稜線上のピークを超えていく。七つのピークを超えるなら、それだけ登り下りしなければならない。登る前はよく考えてなかったが、そういうことだ。巻道は無く、あるのはバカみたいに真っ直ぐな直登ルートのみである。それでも、ひとつ登るたびに、その分だけ近づいてくる山頂を目にするのは気分いい。
いい山だな。空は青く、風は優しく、静けさに満ちている。
前日の高原山も三百名山のひとつであったが、この七ヶ岳もそうである。百名山や二百名山にはさすがと唸らせる素晴らしい山がたくさんある(微妙なのもあるにはある)が、三百名山くらいになると、その他の山々とそれほどたいした差はなかったりもする。日本には良い山が登り切れないくらいあるのだ。そんな中でも、この七ヶ岳は特別いいなと思わせる山であった。
三番岳からはいったん大きく下った。ということは、さらに大きく登り返すということでもある。
ここまで歩いてきた体には少々キツい登り返しだが、気分がいいので楽々だ。二番岳まで登って振り返ると、超えてきた峰々が見渡せた。
最後の稜線を歩いて一番岳に到着した。
日光連山、尾瀬、男鹿山塊、那須連峰、すべてがくっきり見えている。高原山もだ。北側には東北や上越の山々。
ああ、この景色を見せてくれてありがとう。
山頂には数名の登山者がいたが、みな平滑沢から登ってきたらしい。尾根を2時間半だけ登って山頂を踏んで帰るより、倍の時間をかけてすべてのピークを超えて来るほうがずっと楽しいはずだ。登頂の喜びは、かけた労力に比例するのだから。
平滑沢へ下って長い長い林道を歩けば車を停めた場所までもどれるようだったが、今回はやめておいた。歩いてない道を歩いてみたい気持ちもあるけれど、やはりもう一度、あのすべてのピークを超えて帰ることにした。それこそが今日の登山にふさわしいと思うから。
2020年11月