リベンジ中門岳
リベンジ…松坂大輔のおかげで、雪辱を果たすとか借りを返すとか再挑戦とかの前向きな意味で日本語に定着していますが、英語本来の意味は復讐報復仕返し怨みを晴らすといったドロドロ怨念を感じさせる言葉であります。
そういうわけで、リベンジという言葉を気軽に使うのに、ちょっとした心の抵抗があるのですが、今回の山行はまさにリベンジ!
リベンジ会津駒!リベンジ中門岳!
そう、ちょうど一年前、登りの途中で足がつって一時間以上も身悶えし、通りすがりの熟女登山者様たちに塩やら漢方薬やらを分けていただき、なんとか会津駒までは登ったものの、中門岳へは登頂かなわず無念の敗退となったM子先生の、まさに執念と怨念のリベンジの日なのであります。
今回こそはと万全を期し、大量の水に塩飴に漢方薬も用意し、昼食は全てわたくしに用意させるという手段で軽量化もし、準備万端気合充実のM子先生なのです。
これでまた足がつったら、ネタ的にはおいしいですよね。
「そういうこと言わないの!!」
怒られましたが、やはりネタ的においしいので、なんとかがんばってみます。
過去二度の足つり事件を分析すれば、どちらもオーバーペースで休憩もとらずに急登を登り続けているうちに…という傾向があります。そこで、序盤からペースを上げて登ります。あまり早過ぎても付いてこないでしょうから、付いてこれるけど足はつる程度の絶妙のスピードで登ります。
が…全く付いてきません。マイペースを維持しているようです。適当に写真を撮ったりして、勝手に休憩もしています。どうやらペース配分を学習したようです。
そうして登り道を登り続け、事件現場に到着しました。
樹林帯を抜けて高層湿原に出てすぐ、目の前には会津駒ヶ岳への稜線が広がっています。
「あれ?もうここ?」
昨年は、ここへ来るまでも痙攣する足をだましだまし登ってきたM子先生なのでした。
「こんな歩きやすい道だったんだ…」
足がつって動けなくなって一時間半ほど身悶えしたベンチを見下ろしながら、M子先生は言い放ちました。
「高尾山と同じくらい楽勝だった」
調子に乗ってるようです…。
ガスも晴れて青空も広がってきました。まずは会津駒へ向かいます。
駒の池の周辺のハクサンコザクラの大群生は、いまが盛りと咲き乱れていて、草原が薄紫色に染まっていました。
会津駒の山頂からさらに先へ。いよいよここから本格的にリベンジ開始です。
木道を歩き、おだやかな湿原を越えていきます。
ワタスゲ、イワウチワ、イワカガミ、ショウジョウバカマ。たくさんの花が咲いていて、M子先生は立ち止まったりしゃがんだりしてなかなか進みません。
ゆっくりゆっくりゴールへと向かいます。
ゆるやかな起伏の湿原をいくつか越えると、目の前に大きな池が現れます。中門大池です。
「お~、ついに来た~」
「会津駒ごときで足を攣るんだ」とか、「会津駒に行ったら中門岳まで行かないと」とか、いろいろ言われて忸怩たる思いであったM子先生も、ここまで来てようやく満足気です。さらっと登ってしまうよりは、よほど印象深い山となったことでしょう。それぞれの人の心の中に、それぞれの人の山があるのだから、これでいいのです。
大池をあとにして、木道の終点の本当の山頂へ。
「山頂の棒はないの?」
ないです。なので、なんとなくそのへんで記念写真を撮りました。
「あ〜、来れてよかった〜。ほんとによかった〜」
ほんと、よかったです。
さらに先の三角点まで行こうとしましたが、雨上がりでドロドロ滑るので断念しました。まあ、ここまででOKでしょう。
帰り道、もう一度会津駒に登るか尋ねると、「もういい…」と言うので山頂は巻き、M子先生の軽量化のために全てわたくしが用意した昼食を駒の小屋で食べてから下山しました。
快調に下って問題なく下山。
これでようやくM子先生積年の怨みも晴れたことでしょう。
めでたしめでたし。