静かな山の美しい紅葉 – 大山 / 天丸山 / 帳付山

荒れた沢を詰めて稜線に出た。紅葉がいい感じだ。天気もいい感じ。

ヤブっぽい稜線を進んで大山へ。丹沢ではなく西上州の大山だ。ここへ登る人は、そんなに多くはないだろう。

どっちを見ても山だ。静かな山の美しい紅葉だ。

大山で折り返し、こんどは反対側へ稜線を進む。縦走路の分岐から天丸山へ向かった。

天丸山は、稜線上に突き出た、先の尖った円柱状の岩峰だ。どこから登っても垂直で、ロープがなかったら取り付きもよくわからない。

麓から登る道は何年か前の台風で崩落して通行止になっている。天丸山へは、群馬と埼玉の県境の稜線から登るしかない。

登山というよりは、ほぼクライミングだ。ロープがなければフリーで登るのは厳しい。登れても降りられないだろう。これを一般ルートと言い切ってしまう西上州はさすがだ。

いったいいつまでこの登りは続くのかと、何段目かのロープを登っていくと、ようやく山頂に着いた。なかなかシビれる山だ。

空が青い。隣の山が見えている。次はあちらへ向かう。

先ほど登った岩壁をこんどは下る。荷物を背負っているとちょっと怖い。

ここを降りてしまえば、あとは平和だった。縦走路はたまに荒れた部分もあったけど、天丸山の登りに比べればたいしたことはない。

そうして快調に歩き続けていくと、帳付山に着いてしまった。

えっ、ここが山頂?

なんともピーク感のない平坦な山頂だった。背の高い木々が生い茂っていて、展望はなく暗い。樹林帯を歩いていたら、そこが山頂だったって感じだ。

こういうこともあるからおもしろい。いちおうここがメインだったんだけどな。

少し先へ歩くと視界が開けたので、そこで休憩した。

この先を歩いていけば、三国峠から甲武信岳まで続いている。この先はここまでとは違って、本格的にバリエーションだ。

よく晴れて暖かく、美しい時間が過ぎていく。いつかこの先の稜線を歩く日のことを思いつつ、いまこの瞬間を十二分に楽しんだ。