冬の初めの北沢峠

1ヶ月の間に書けるブログの量は限られているので、いったん遅れるとなかなか追いつけない。というわけで、ようやく昨年の11月だ。

11月の二週目の週末。小屋は閉まったが、バスは運行している年に一度の機会。この日は、静かな北沢峠を簡単に楽しめる。

朝一のバスで到着し、テントを張って甲斐駒へ向かった。

朝のうちはガスで真っ白で、テンション上がらず登ってきたが、駒津峰に着くころにはすっかり青空が広がっていた。

毎年この週に来てるけど、毎年天気がいい。しかし今年は雪が少ない、というかまったくない。

雪がないおかげで快調に進んだ。凍結箇所もなさそうなので、この時期いつもは往復とも巻道だが、今回は直登で登った。

青空に向かってまっすぐ登っていく感じが気持ちいい。前にも後ろにも、だれもいない。

山頂に着いた。ここへ登るのは何度目だろう。夏とは違って静かで穏やかな山頂だ。

下山時には摩利支天にも立ち寄った。

年によってはすでにトラバース路が雪で埋もれていて行く気になれないこともあったが、今年はまだ完全な夏道だった。

一日を満喫して北沢峠へもどった。

テントがけっこう増えている。初めてこの季節に来たときは、自分の他に数張りのテントしかなかったが、年々増えてきている、とはいえ十数張り程度なので、夏の喧騒とはほど遠い。

背負って登らなくてもいいのでたっぷり持ってきた食料と酒で夜を過ごした。

翌朝も快晴。仙丈ヶ岳へ向かう。

森林限界を超えて振り向くと、甲斐駒から鋸岳への稜線。その向こうの八ヶ岳。毎年見ているが、何回見てもいい眺めだ。

小仙丈ヶ岳に着いた。ここはとても気持ちのいい場所。

ここからの景色はほんと気持ちいい。

想いのつまった南アルプスの山々、小仙丈カールの優美な曲線、静かで美しい尾根、いつまで眺めても眺め飽きない。

ゆっくりゆっくりと山頂へ向かう。

山の小説やノンフィクションもだが、扱う題材は遭難や死だとか、厳しいクライミングだとかがほとんどだ。でも実際の山は、山の時間の99%は、こんな穏やかで満ち足りたものだ。

山頂に到着。空は深くて、空気は透明で、風は優しく吹いていた。

トラバース路も雪に埋もれてなさそうだったので、カールへ降りてみた。ここからの眺めはひさしぶりだ。こんどはここにも泊まってみたい。

そろそろ日帰り組の先頭が登ってくるころだ。この後は彼らに譲り、下山することにしよう。ゆっくり降りても午後一番のバスに間に合うだろう。

振り返り、最後にもう一度、美しい稜線を視界に収めてから、北沢峠へと下った。