静かに春を待つ山々 – 宝生山 / 氷室山 / 根本山 / 熊鷹山

ぜんぜん咲いてない…。

宝生山の山頂付近はアカヤシオの群生地だと聞いて来てみたのだが、咲いていたのはわずか数本で、他はまだ固い蕾だった。そろそろ季節だと思ったが、まだ少し早かったようだ。まあ、しかたない。自然を相手にしてるんだから。それにしても山頂周囲のアカヤシオがすべて咲いたら壮観だろう。

宝生山から少し先の氷室山まで歩いた。

いくつかあった山名板のうちのひとつがこれだった。

氷室つながりだ。

海外生活が長かったのとテレビを見る習慣が無いのとで、現代日本の芸能事情に関してはさっぱり無知である。それでもこれが氷室京介というロックボーカリストだろうことはわかる。彼が所属していたバンドがなんというのかは知らない。曲ももちろん知らない。そんな芸能事情に極端にうとい人間にもわからせるのは、なかなかすぐれた意匠ではないだろうか。

いったん宝生峠までもどり、反対側の稜線を歩く。十二山まで行くと、そこから先は歩いたことのある道だ。歩いたのはついこないだのような気がしていたが、もう四年も前のことだった。

まずは右へ行って根本山を目指す。

宝生山の状況からまあ咲いてないだろなとは思ったが、アカヤシオもシロヤシオもヤマツヅジもみごとに咲いてなかった。山はまだ冬の終わりだ。新緑の季節はもう少し先のようだ。

根本山にはあっさり着いた。こちら側から来るとなんということもない山だ。沢コースを登るとなかなか激しいのだが、稜線は穏やかである。

十二山までもどり、さらに熊鷹山まで行った。

わかってはいたが、まったく咲いてない。まあ、こういうこともあるさ。

SNSで情報をかき集めて最適な時期にピンポイントで訪れるのは、やろうと思えばできなくはないけれど、他人の情報に踊らされてるようで好きではない。美味しいところだけをつまみ食いするのも好きではない。それよりも自分の気の向くままに気の向くところを歩きたい。花咲き乱れる華やかな山だけが山ではない。静かに春を待つ山も悪くはない。

そんな負け惜しみをぶつぶつ呟きながら、車を停めた峠の林道まで歩いて帰った。

2025年4月