超ハイレベル低山 – 谷倉山

集落を抜けて山に向かって歩いていくと、すぐに道は荒れた林道になった。

林道の終点から山に入る。

沢沿いに登っていく。

薄暗くて荒れていて、あまり気味の良い沢ではない。

沢沿いの踏跡をしばらく登っていくと、道が消えた。

この先、沢には倒木が積み重なっていて、とてもじゃないが登っていける状態ではない。とはいえ尾根に取り付こうにも、崩れているので登る手がかりがない。

さて、どうしたものか。倒木で埋まった沢か崩れた尾根の二択なのだが、尾根の方がマシだと判断した。

崩れた斜面に足場を確保してよじ登る。崩落箇所を越えたら、あとはとにかく上へ上へと登るばかりだ。

ときおり踏跡らしきものがあったり、すぐに消えたりしつつ、とにかく上へと登っていく。いずれは山頂に続く稜線に出るはずだ。ていうか、これで一般ルートなのかよ、レベル高すぎだろ。

藪を掻き分けて稜線に出ると、驚いたことにしっかり整った登山道が通じていた。

なんじゃこりゃと思いつつ、山頂へ向かう。

谷倉山の山頂は電波塔に占拠されていて、山名板が電波塔のフェンスに括り付けられていた。あの登山道でこの山頂に登ってくるのは、なかなかレベルの高い登山行為だ。

さて、下山だ。

登りに使ったルート(もはや登山道とは言い難い)は、登る分にはまあ大丈夫だが、下りだと方向を誤りそうで使いたくない。そこで、もうひとつのルートから下山することにした。集落から谷倉山に至るルートは二本あるのだ。

快適な稜線の道を進んでいき、登りで出てきたポイントを通過してさらにしばらく行くと、もうひとつの登山道がある。

こちらはちゃんと道になっていた。なんだよ、こっちで登ってくれば良かったな。

快調に下っていくと、しばらくして道が消えた。マジかよ。

尾根を下っていく登山道が、藪に飲まれて消滅している。でも、この尾根を下っていくしかないんだよな。合ってるのかどうか若干不安になるが、何度確かめてもこのまま薮尾根を下るしかない。ていうか、これ一般ルートだぞ…。

藪を踏み分け踏み分け下っていくと、やがて舗装路が見えた。

ふぅ、やっとかよ…とひと安心したのも束の間、なんと法面で降りられないではないか。

どうすんだよこれと思いつつ、なんとなく付いてる踏み跡を法面に沿って歩いていく。

だんだん傾斜が急になってきて、最後は法面の切れ目の崖のような斜面を、密生する植物に捕まりながら滑り降りていくと祠の横に出た。

上の写真の右側から降りてきたのだ。いまこの写真を見返しても、ここが登山口にはとても見えない。ただの薮斜面だ。しかし、ここしか降りられる場所は無さそうでもあった。もしも逆ルートで歩こうとしていたら、ここから山に入るとは絶対に思わなかっただろう。

いやはや、なんともレベル高い山だった。たったの標高599mだからと気軽に登ったが、やたらと濃い山行になった。

車を停めた場所まで集落内を歩いてもどる。

緊張感もほぐれて我にかえると、なんだか足首まわりがチクチクする。いやな予感がする。このチクチク感には覚えがある。裾をまくって足首を見ると、何匹も何匹も何匹も山ビルが吸い付いていた。

うわぁ、やられた。まったく油断してた。どこでやられたんだろう。沢かな?だとしたらかなり長い時間、吸いつかれていることになる。

たっぷり血を吸って丸々とふくらんだヒルを剥がしていく。いつもはヒルにやられてもすぐに処理していたのでなんともなかったが、かなり時間が経ってから引き剥がすと、その後、血が止まらない。靴下は血でカピカピになり、下山後の温泉でも血が流れて困った。

消滅した登山道、電波塔に占拠された山頂、降りられない法面、たっぷりの山ビル。いやはやなんともレベル高い山だった。

おすすめです。

2025年6月



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