勝浦タンタンメン

朝から雨が降っていた。雨の港町はうら寂しい。

有名な朝市も雨天は自動的に中止になるのか、露天は出ておらずひっそりとしていた。朝市目当てだった観光客が所在無げに街を歩いている。

朝市に合わせて早朝から営業している店のうち、いくつかは雨にもかかわらず開いていた。しかし道行く人も少なく、賑わいにはほど遠い。

そんな朝から営業している食堂のひとつでタンタンメンを食べた。勝浦タンタンメンと言われる、この地に独特のタンタンメンだ。

いわゆる担々麺とはかなり異なる。練り胡麻は一切使われておらず、たっぷりのラー油を加えた醤油ベースのラーメンである。炒めた玉ねぎで甘みを加えているが、旨味成分は控えめのシャープな風味だ。ごま油の香りがぷんと立ち昇る。

勝浦タンタンメンは一軒の大衆食堂から始まった。店主は担々麺をメニューに取り入れようとしたが芝麻醤が手に入らず、手に入る材料で試行錯誤した結果生まれた。このオリジナルのタンタンメンは、海で働く人々の冷えた体を温めると人気になり、広まっていったという。

この発祥の店は、いまでは港から離れた山間に移転して店を構えている。開店前から大混雑で、確かにこれはもう街中で営業できる状態ではない。

元祖の勝浦タンタンメンには、芝麻醤はもちろんのこと胡麻すらも使われていなかった。そしてやっぱり玉ねぎがたっぷりだ。

大辛にしたらけっこう辛くて、胃がかあっと熱くなった。

2024年2月