Space Blue – 鳳凰三山

なんという空の色。深くて青くて透明で。
雲ひとつなく、空気は凛と張り詰めている。

宇宙の色を映したような空に聳えるオベリスク。
こういうのを見ちゃうから、山はやめられない。

御座石鉱泉から延々と登ってきた甲斐があったというものだ。

見渡す限りだーれもいない。稜線貸し切りだ。

オベリスクにちょこっと登ると、白く輝く白峰三山が赤抜沢ノ頭の上に姿を現わした。

そして、観音岳の奥には富士山も。

てっぺんまで登るのは怖いので、簡単に登れるとこまでにしておこう。

地蔵岳に登って帰るつもりだったけど、これで帰っちゃうのはほんと惜しい。そんなふうに思わせる絶好のコンディションだ。

赤抜沢ノ頭まで登ってみようか。10分ほどで登れるし、あそこまで行けば遮るもののない白峰三山が見える。それに、あそこから眺めるオベリスクは特別かっこいい。

そうして赤抜沢ノ頭まで登ると、その先にはより近づいてより荘厳さを増した観音岳が聳えていた。

あそこまで…行くか。

天気は最高、稜線上には他に誰もいない。快晴の青空の下、鳳凰三山をひとり占めして歩けるなんて、こんな機会は二度と訪れないかもしれない。

下山途中で暗闇になるのは間違いないが、少々無理をしてでもここは行くとこだろう。

雪はほとんどない。

途中の樹林帯も吹き溜まりは雪山っぽくなっていたが、1月の南アルプスとは思えない積雪量であった。

今年はなかなか雪が積もらない。まあ、こんな年もあるさ。

観音岳の山頂に近づくにつれて、先ほどまでいたオベリスクがどんどん低くなっていく。オベリスクへ続く稜線の先には甲斐駒ヶ岳の尖った頂が特徴的だ。

北アルプスの白い山並みもずーっと見えている。もちろん北岳、間ノ岳、農鳥岳に仙丈ヶ岳、それに富士山も。

八ヶ岳にかかっていた雲も取れた。

周囲の山々が全て見えている。360度ぐるっと山。

まるで、宇宙の中心に立ってるような気分だ。

この場所から動くことができない。なにか圧倒的なものに心を掴まれてしまったみたいだ。

空は青空。稜線上にただひとり。

大きく息を吸い込むと、宇宙の気で体内が満たされるようだった。

さらに先の薬師岳へも行けそうだったが、ここまでにしておく。青木鉱泉スタートなら迷わず行くとこだけど、御座石鉱泉までもどらなきゃならないからね。

分岐から鳳凰小屋へ下り、燕頭山へ向かう途中で日が暮れてしまった。

でもいいのさ。
あんなすごい景色を見てきたんだからね。