庄内、春の味覚 – 海の幸編
あまり知られていないかもしれないが、山形県は食べ物が美味い。その中でも庄内地方は特別だ。県内の他の地域、最上、村山、置賜の三地域はすべて内陸にあるが、庄内だけは海に面している。山の恵みとともに日本海の海の幸も楽しむことができるのだ。
そんな庄内の魅力に惹かれて、季節を変えてたびたび訪れることになった。何度も訪れて食した料理の数々を、季節ごとに紹介していきたい。
まずは春の味覚から。

サクラマス
庄内の春の魚は、なんと言ってもサクラマスだ。鮮やかな桜色の身が春の訪れを告げる。庄内の春には欠かせない魚だ。
渓流で産まれたヤマメが海に下るとサクラマスとなる。三年間を海で過ごし、故郷の川に帰って産卵する。ヤマメと比べて大型になり希少性もあって、サケマス類の中でも高級魚だ。

煮ても焼いても良く、さまざまな調理法で食べられるが、サクラマスの美味しさを堪能するなら、まずは素焼きだろう。酒をふってふっくらと焼き上げる。
サクラマスに茹でたニラを添えたのをニラマスという。サクラマスとニラという、春が旬の食材の取り合わせだ。

サクラマスのあんかけは酒田の春祭りにかかせない。蒸したサクラマスに薄っすら甘い醤油あんをかける。そうめん又は細めのうどんを添えるのが定番だ。

あんかけ料理
庄内の人はあんかけ料理が好きだ。東北らしく甘味を加えないソリッドな味付けが主流なのに、あんかけには薄っすら甘味が付いている。あんかけも甘い味付けも、北前船によって上方からもたらされたものだ。郷土料理の中に都の味が紛れているのも庄内の魅力である。
代表的なあんかけ料理は、サクラマスのあんかけ、そうめんのあんかけ、そして胡麻豆腐のあんかけだ。胡麻豆腐のあんかけは、スーパーのお惣菜コーナーで見かけることもある。

お惣菜コーナーの胡麻豆腐はそれなりだったけど、割烹料理店でいただいた胡麻豆腐のあんかけは、これまでに食べたどんな胡麻豆腐もを凌駕していた。女将さん曰く、庄内の人は胡麻豆腐にうるさいので良いものを使っているとのことだった。新鮮で質の良い食材が豊富に手に入る環境の地元民を相手にしてるのだから、料理屋さんもさぞたいへんなことだろう。

その他には枝豆のあんかけというのをお惣菜コーナーで見たことがある。茹でて潰した枝豆に、やはり薄ら甘いあんがかけてあった。
卵寒天
例外的に甘い食べ物には、あんかけの他に卵寒天がある。溶き卵を流して固めた寒天なのだが、醤油と砂糖で甘じょっぱく味付けられている。
かつては貴重だった砂糖で甘味を付けて、同様にかつては貴重だった卵を流し込んで豪華さを演出したハレの日の食べ物だ。サクラマスのあんかけと共に春の祭りには欠かせないものだったが、いまではスーパーのお惣菜コーナーで通年販売されている。

卵寒天は実に不思議な食べ物だ。なにせ甘じょっぱい寒天である。どういう顔をして食べたらいいのかわからない。酒の肴にしてみたが、なかなか難易度が高かった。聞くところによると、デザート的に食べるという説と、ごはんのおかずにするという説がある。

ごはんのおかず!甘じょっぱい寒天で白飯を食べるなんて、かなりの上級者ではないか。まだ一度も試したことはないが、次の機会にはやってみようと思う。酒よりも白飯のほうが合うような気もする。






