しもつかれ
栃木県の郷土食として真っ先に名前が上がる「しもつかれ」、名前はよく知られているにもかかわらず、実物を食べたこともなければ見たこともない。食堂や居酒屋のメニューでも見た記憶がない。
どうやら家庭で作って食べるのが主なようだが、どこかで食べられないだろうかと聞き込みをすると、スーパーのお惣菜コーナーで売ってるよと教えていただいた。
さっそくスーパーへ行き、お惣菜コーナーを丹念に探すと、冷蔵ケースの端にそれはあった。
すでに想定外だ。ビニールパック詰めで、これは明らかに液状である。
成分表を見ると、大根、酒粕、人参、鮭の頭、いり大豆、醤油、砂糖とある。
粗くおろした大根や人参に細かく刻んだ鮭の頭といり大豆を加えて酒粕で煮込んだ食べ物だという。鮭の頭を使うのは荒巻鮭の再利用であり、元々は旧暦の正月も過ぎた二月の初めごろに家庭で作られたものらしい。
できたてではなく冷やして、温かい赤飯とともに食べるとのことで、赤飯も用意した。ほんとだろうか?騙されてないか?との疑念が湧き上がるのを抑えられない。
見た目は完全にゲ◯である。意を決してひとくち食べる。
うん、酒粕だ。ものすごく酒粕だ。大根おろしを酒粕で煮たのを想像すれば、そんなに遠くはない。大根はかなり粗くおろしてあるので、ザラザラした舌ざわりである。
教えられた通りに赤飯とともに食べてみる。うん、思ったよりいける。意外と美味しい。酒粕がほどよく中和される。
しかしこれ、今時は流行らない食べ物だよなと思うとやはりそうらしくて、地元出身者でも特に若者には苦手な人も少なくないようだ。そんな状況に風穴を開けるべく、給食で出したり、しもつかれ食べくらべ大会みたいなものも開催されているらしい。
ともあれ、こんな古くさい食べ物が現代まで受け継がれ、愛されているのは特筆に値すると思う。
家庭ごとに作り方や味付けが異なるというしもつかれ、ぜひ名人の作ったものもいただいてみたい。