津軽の郷土料理 – 貝焼き味噌 / イガメンチ / ねぶた漬け / ホヤの水物
弘前には二泊する予定なので、いろいろ食べて飲んで…とわくわくしていたのだが、意外と店が少なく、いや飲食店はあるにはあるのだが、地元の人が行く地元料理の飲み屋というのがなかなか見つからず、郷土料理だと観光客相手の店ばかりが目についてしまう。しかもお盆だからかどこも混んでいて、席を確保するだけでもたいへんだった。
そんな中でも、いくつかは津軽らしい食べ物にありつくことができた。
まずは、だいたいどこの居酒屋にもある貝焼き味噌。ホタテの貝殻を火にかけて、出汁と味噌でホタテを煮てから溶き卵を流し込んで食べる。なかなか味が濃く、酒の肴でもいいが白ごはんと食べたくなる。
本来は大型のホタテの貝殻を使い、鍋のようにさまざまな具材を入れたようだが、現代では養殖物の小型のホタテを使っているため一人前サイズだ。
イガメンチもどこの居酒屋でも見かける食べ物だ。イカの身やゲソを粗みじん切りにし、野菜と共に小麦粉でまとめて揚げている。シンプルに美味しい。
飲食店での提供だけでなく、各家庭でもよく作られるそうだ。スーパーの惣菜コーナーにもあった。だが、大手スーパーのイガメンチは衣を付けて揚げた別物で、冷めて油もべっちょりしてたので、ぜひともお店で出来立てをいただきたい。
津軽人はねぶたに命をかけている。そんな津軽の誇りねぶたを名前に冠したねぶた漬け、いったいどんな漬物なのだろうと期待した。数の子やスルメを昆布と共に醤油漬けにしていて味は松前漬けと似ているが、松前漬けと大きく違うのは細かく切った大根やきゅうりがたっぷり加わっているところだ。
大根の存在感が圧倒的だ。薄切りの大根はパリパリと小気味良い。青森以外ではあまり知られてないが、青森県民のごはんのお供の定番らしい。数の子がゴロゴロと入ってるのは高級品なので、家庭で常食されるのは大根が主力の製品だそうだ。
弘前で最も食べてみたかったのがホヤとミズの水物だ。水物というのは、塩を加えた昆布出汁に浸して食べる津軽の郷土料理である。ミズは時期を過ぎているので無いだろうと思っていたが、ホヤも見当たらなかった。というか水物自体がほとんどのお店に無い。あまり流行らない料理なのだろうか。
お店で食べることができなかったので、ホヤを買って帰り自宅で作ってみた。昆布で出汁を取って、塩を加えて、ひと口大に切ったホヤを浸すだけだから失敗しようがない。いくつかのレシピを参照したところ、どれも想定以上に塩を加えていた。レシピ通りに作ると塩分濃度が2.5%になる。ほんとにこんなに塩っぱくていいのか疑問だったが、正解を知らないのでレシピを信じることにした。
確かに塩っぱいが、塩っぱ過ぎて食べられないようなことはない。それよりも、塩分濃度の高い出汁がホヤ独特のクセをほどよく抑えてくれている。これが郷土料理の知恵なのだろうか。ホヤの刺身をわさび醤油で食べるより、水物のほうがずっと好きだ。いつか本場の本物を食べてみたい。