スタミナ冷やしと焼肉冷やし
スタミナ冷やし、茨城県の旧勝田市とその周辺地域だけで局所的に愛されてる麺料理だ。茹で上げた中華麺に醤油ベースのどろっとした餡をたっぷりかけた麺料理である。
冷やしと言うけど冷たくはない。茹でた麺を水で〆るが、氷水で冷やすようなことはしない。麺は生温かいか、せいぜい常温だ。そこへ舌を火傷するほど熱々の餡をかける。超熱々餡をぬるい麺と混ぜ合わせて食べると、ちょうど良い温度になる。決して冷たくはならない。

餡はかなり独特だ。名前にスタミナと付いているものの、具は野菜が中心である。キャベツや白菜にかぼちゃ、ニンジン、ニラ、キクラゲなど。それとレバーがスタミナ冷やしの具になる。
味はびっくりするほど甘い。ひとくち目のインパクトは絶大だ。ひどく甘いがただ甘いだけではなく、極甘に驚いた後にピリ辛が遅れてやってくる。でもやっぱりひどく甘い。

勝田周辺にはスタミナ冷やしの食べられる店が数多くある。地元民によると、どこどこの味はどうでこうでと各人それぞれに好みがあるようだが、餡の強烈な味はどの店もそれほど変わらない。それよりも麺の違いが大きい。特別に美味しいと思う店は、自家製のごわごわ太麺を使っていた。

スタミナ冷やしはスタミナラーメンからの派生である。スタミナラーメンは普通の醤油ラーメンに極甘スタミナ餡をかけたもので、こちらが原型だ。スタミナラーメンとメニューにあっても、まぎらわしいので注文時には使われない。汁なしの餡かけではなくスープタイプを注文したい時は「ホット」と言う。スタミナホット、あるいはホットだけでも通じる。ラーメン屋なのにホットとか、コーヒーかよと思うが、この地域の共通語である。
ベースになっているラーメンは煮干し出汁の上品なスープだった。その表面を暴力的な甘さのスタミナ餡が覆っている。スープだけをひとくち飲んで、このまま醤油ラーメンとして食べたいと思ったがそういうわけにはいかない。餡をスープに溶かすとしゃびしゃびにはなる。味も多少は薄まるものの、それほど変わらない。元々の味が強烈なので、スープで多少のばしても極甘なのは変わらないのだ。出汁の香りなんて一瞬で消し飛んでしまう。
熱々のスープに熱々の餡をかけるから、ものすごく熱い。勢いよく食べれば確実に舌を火傷する。その名の通り本当にホットだ。ベリーホットである。猫舌の方には、冷やしの方を強くおすすめしたい。

スタミナ冷やしのスピンオフに焼肉冷やしがある。これは具が野菜とレバーの代わりに肉になったものだ。肉だけで野菜はない。ひたすら肉である。肉は揚げ焼きしてあるのでボリューム感がマシマシだ。あとはネギ、わかめ、コーンがトッピングされているだけである。
餡はもちろん暴力的な甘さのピリ辛醤油味である。極甘餡がからんだたっぷりの肉で大盛りの太麺をわしわし食べるのだ。食べるだけで体力を使う。トッピングだけが一服の清涼剤である。
知っている限りでは、焼肉冷やしのある店は一軒しかない。スタミナ冷やしと焼肉冷やしが同じ値段なので、野菜とレバーよりもひたすら肉肉肉の方がお得な気がして、そちらの注文が多い。

どれもこれもあまり美味しそうには思えないかもしれないが、そんなことはない。いや、美味しいのかと問われると、自信を持って答えにくいのだが、クセになるのは間違いない。現にこうして書いているうちにも、またあの極甘餡のからんだごわごわ太麺が食べたくなっている。

他地域にはまったく普及してないようなので、スタミナ冷やしや焼肉冷やしを体験するには現地まで行かなければならない。ぜひとも勝田まで出かけて、あの衝撃を味わってほしい。





