日本150名山 – 十枚山
長くて暗い針葉樹の森を抜けると、落葉した広葉樹の明るい尾根道になった。
ほどなくして、前方の視界が開けた。
着いた。山頂だ。十枚山の山頂だ。
山並みの向こうには海が広がっている。駿河湾に伊豆半島。
振り返ると富士山も見える。
いい山頂だ。とっても気分のいい山頂だ。
山に登る人なら、深田久弥の日本百名山ってのは誰もが知ってるだろう。達成した人も目指している人も多い。日本二百名山や日本三百名山もそれなりに一般的だ。
二百名山や三百名山とは関わりなく、日本百名山に選ばれなかった50の山々に関する深田久弥の著作を集めた本が出版されている。それと百名山を合わせて深田久弥の日本150名山。
あまり聞いたことはないと思う。出版年は深田の没後30年近く経っており、本人が50の山を選んだわけではない。各々の山に関する文章の初出もばらばらである。でもいいのだ。細かいことは気にするな。
この50の山の中には、20の二百名山と7つの三百名山が含まれている。つまり、三百名山までに入っていない山が23もあるのだ。
そしてこの十枚山も、そんな23の山の中のひとつなのであった。
三百名山圏外だとはいえ、深田150名山の山である。申し分のない展望と気持ちのいい稜線の道が待っている。正直、いくつかの二百名山や三百名山の山よりも、こっちの方がずっと楽しい山である。
誰もが名前を知ってる山でなくても、みんながぞろぞろ向かう山でなくても、いい山はたくさんある。そんな山に、ひとつでも多く出会いたいものである。