酒田の町をぶらぶら歩く

酒田の見どころはなんと言っても山居倉庫だ。私も初めて酒田に来たときにはじっくり見て回った。

しかし酒田にはそれ以外にも様々な「訪れるべき場所」がある。

中心街には酒田の繁栄を支えた豪商の屋敷がいくつかあり、一般公開されている。

昔ながらの店も多く、どこも入ってみたい気にさせる。そんな中でずっと気になっているのが天ぷら屋だ。天ぷらを食べさせる店ではない。お惣菜として天ぷらを売る店だ。

昔はよく見かけたお惣菜の天ぷら屋も、いまやすっかり絶滅危惧種だ。そんな店が今でも現役なのは嬉しくなってくる。よく行く居酒屋の近くにあるので何度も前を通っているのだが、いまだに買ったことはない。いつかここで天ぷらを買って食べてみたい。

すっかり寂れた酒田の繁華街も、かつては大いに賑わったという。さみしい繁華街でひときわ目を引く瀟洒な建物が老舗料亭の山王くらぶだ。現在は料亭ではなく観光施設として生まれ変わっている。

同じく老舗料亭の相馬屋も現在は観光施設だ。もはや料亭が営業を続けられる時代ではないのだろう。

かの有名なキャバレー白ばらは、山王くらぶの向かいにある。

高度経済成長を背景にして絶大な人気を得たキャバレーも、時代の波には抗えず次々と閉店してしまった。つい最近も、東京最後のキャバレーの閉店がニュースになっていたばかりだ。確かにショーを見ながら酒を飲むというのは時代遅れなのかもしれない。

酒田のキャバレー白ばらも2015年に閉店し、その後はレンタルスペースとして営業をつづけたり、クラウドファウンディングで資金調達して営業再開を果たしたりもしたが、2022年に再び閉店してしまった。

白ばらと並ぶ有名ナイトスポットがケルンだ。サントリーのカクテルコンクールでグランプリを受賞した「雪国」の生みの親、井山計一氏が日本最高齢のバーテンダーとして立っていたバーである。

2021年に井山氏が亡くなった後も息子さんが後を継いで営業をつづけていたが、建物の老朽化により2023年に閉店した。しかし嬉しいことに、現在は近隣の新店舗で営業を再開している。

即身仏が安置されている海向寺は高台にあり、周辺にはいくつかの寺院や神社が固まっている。

立派な神門と広々とした境内を持つのが下日枝神社だ。毎年5月20日の酒田まつりは下日枝神社の例大祭である。

下日枝神社の裏手は旅館街になっていた。廃業して廃墟になっている旅館もあったが、営業している旅館もちらほら見かけた。趣のある建築が多く、泊まってみたくなる。

こうして見ると、失われてしまったものや、かつての栄華の名残りが多い。北前船の寄港地として繁栄し、「西の堺、東の酒田」と言われた時代の賑わいは、現代の酒田にはない。町はお世辞にも活気があるとは言えない。

少子化や経済構造の変化で衰退する地方都市にコロナ禍がとどめを刺したようだ。もう少し早く来ていたら、繁栄の片鱗を体感できたのかもしれないと思うと、かえすがえすも残念である。

酒田が再び賑わいを取りもどす日はもう訪れないのかもしれない。それでもわずかに残る栄華の名残りを愛でつつ、そんな日が来ることを夢見ずにはいられない。

2025年4月



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