関東の秘境 – 高峯 / 雨巻山
東京の西の端に住んでいるので山梨には親近感があるが、同じ関東地方でも茨城は縁遠い。登山で行く機会はほとんどないし、わざわざ旅行で行くこともない。そんな未開の地、茨城に出かけることになったので、そのついでに日頃は行かない山域で山登りをしようと地図を眺めた。
目的地と予定時間と諸々を考慮して茨城と栃木の県境にある高峯に登り、そこから県境を縦走して雨巻山まで行くことにした。雨巻山は県境から外れていて厳密に言えば茨城の山ではなく栃木の山なのだが、栃木県の右下は茨城県に食い込んでいるから実質茨城と言ってもいいだろう。栃木県も足利や佐野ならそれほど遠いとは思わないが、小山や宇都宮より東へはほとんど行ったことがない。この辺りは、いわば自分にとっての関東の秘境である。
五大力堂という寺の駐車場というか、近くの空き地に車を停めた。
この五大力堂には平将門の鎮魂のための五大力菩薩像が祀られていたが、その像はいまでは別の寺の美術館に展示されているらしい、そんなことが案内板に書いてあった。つまりはこの五大力堂は空っぽなのである。当然ながら寺には誰もいない。空き地には他に停まってる車はなかったし、周囲には何もない山の中だ。訪れる人もほとんどいないだろう。
登り初めてしばらくしたら道が消えた。登山道を歩いていたはずなのに、いつのまにか自然のままの斜面を登っていた。登山道が崩れた箇所も、整備が入ってるようには見えない。登山口の様子からだいたい予想していた通りだ。道が無くても登りなら問題ないが、今回はピストンである。下山時に迷わないよう地形を記憶しながら登る。
道だったり道じゃなかったりの斜面を1時間登ると稜線に出た。この稜線が茨城と栃木の県境になる。ここまでの山道とは打って変わって、広々としてきっちり整地された高速道路のような登山道が通じていた。
いちおう分岐に道標があったが、朽ち果てて文字は読めない。
登ってきた道は、まあまあマイナーなルートだったようだ。
稜線に出て、まずは右へ行く。すぐに高峯の山頂だ。立派な山頂だ。ちゃんと山頂している。ここまでの道からは想像できない。
この先に進むと仏頂山という山へ行けるようだが、今回はそちらへは行かず、ここで折り返して雨巻山へ向かう。
歩き始めてすぐに見晴らしのよい草地に出た。なかなか気分の良い場所だ。帰りはここでのんびりしようかな。
それにしても人がいない。朝から誰にも会ってない。
高速道路を進んでいく。
雨巻山へは、いったん大きく下ってから再び大きく登り返すのだが、といっても標高差200mなのでたいしたことはない。
高峯からは二時間もかからずに雨巻山に着いた。驚いたことに、山頂は多くの登山者でにぎわっていた。いったいこの人たちはどこから来たのだろうと思ったが、どうやら反対側から登ってきたようだ。栃木側から登るのがメインルートなのだろう。確かに栃木の人はよく地元の山に登る気がする。茨城の人は…あまり山には登らなさそうな印象だ。
さほど広くもない山頂にたくさんの人がいて、なんとなく落ち着かないので早々に引き返した。
行きと同様に途中では誰にも出会わなかったのだが、あの見晴らしの良い草地までもどると多くの人がくつろいでいた。おどろいた。どこから来たのだろう。ていうか、登山者には見えない人もちらほらいたが、なにしに来てるんだろう。
やはり秘境だ。想定外だ。これまでの常識は通用しない。知らない山域は楽しい。
道なき尾根を慎重に下山した後は、笠間に寄り道したり勝田の街をぶらぶらしたり、あまりゆっくりはできなかったものの、なかなかおもしろい一日だった。
茨城も悪くないな。また来よう。
2025年3月
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